【◆A】大魔王様と下僕ちゃん5【小湊亮介】

206、本音と建前 ページ27

どんどん迫ってくる卒業式。
何事もなく過ぎていく当たり前の日常。


「亮介はAと離れるのが寂しくないのか？」
「寂しいわけないじゃん。気楽にパシれる奴が居なくなってちょっと困るだけだよ」


寂しくないなんて言葉は嘘だ。
寂しいに決まってる。
この一年、ほぼ毎日隣にいた奴が居なくなるんだ。
だけどそれを言ったら他の奴らだって同じだし。
同級生にもなれば、共に過ごしてきた時間はAより2年も長い。


「会おうと思えばいつでも会えるし」


笑顔で口にする細やかな強がり。
分かってる、友達に対して感じる“寂しい”とは訳が違う。
俺はAが好きだから、だから寂しさを感じるし離れたくないと思う。
人間なら誰もが抱くであろう、ごくありふれた感情。

“恋心”


「別に離れ離れになるとは思ってないから」


どこに行こうが、何があろうが、俺たちが過ごしてきた一年という時間は消えて無くなったりしない。


「それにほら、アイツの相手なんて務まるの、俺ぐらいじゃん？」
「いやそれは逆だろ。お前の相手務まるのがAだけなんだよ」
「は？」
「…」


俺はただ待ってるだけだよ。
アイツが一生懸命俺の後を追っかけて来るのを。
Aなら必ずついてくるって、信じてるからね。

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