204、スウィートチョコレート ページ25
「…小湊、先輩…？」
ぎゅうぅと強く抱き締められたまま、身動きも取れず胸に顔を埋める。
ドキドキうるさい心臓の音は、多分自分のかな。
顔が熱い、耳まで熱い。
でもこの場所はどこよりも落ち着く、うちだけの居場所。
「…お前、甘い匂いがする」
「くすぐったいよ、先輩」
すんすんと耳元で小湊先輩の息が揺れる。
声を聞くだけで不安や緊張が全部消えていくようなあったかい錯覚。
「純とか哲がお前のチョコ持ってるの見たよ」
「あ、うん。皆に配ったッスから」
「でも市販のチョコだったね」
「それは…えっと…」
もうバレてる！
小湊先輩のだけ手作りだって、バレてる！！
うわあぁ、下心見え見えじゃん！恥ずかしいっ…！
「小湊先輩のも、市販のにすればよかったッスね…でも手作りの方が、いっぱい気持ちが伝わるかなって思って…」
「俺は市販のより手作りの方が嬉しいけど」
大魔王様が何だか素直。
ゆっくり顔を上げると、真っ直ぐうちを見下ろしてた小湊先輩と目が合った。
「…なんで、受け取ってくれたんスか？うちのチョコ…」
「気まぐれだよ、ただの気まぐれ」
「気まぐれ、ッスか…」
小湊先輩に見つめられていると、チョコレートみたいに脳がとろんと甘くとろけていく。
先輩の手がうちの熱い頬に触れひやりと熱を奪う。
思わず肩を竦めると、頬を撫でていた指先でクイッと顎を掬われた。
「せ、ん…ぱ…」
再び視線が交わる。
さっきよりも距離が近い。
途切れ途切れの言葉を紡ぐと、小湊先輩の唇が微かに動いた。
「…目、瞑って」
ギュッと小湊先輩のブレザーを握り締める。
心臓が破裂しそうなくらいドキドキと高鳴ってる。
大魔王様の言葉に逆らう術を、うちは持ち合わせてない…
唇に触れた温もり。
胸に抱いていたチョコレートが、腕をすり抜け地面に落ちた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 339人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
橋姫(プロフ) - リンさん» リンさん感想ありがとうございます！楽しんでいただけて嬉しいです(o^^o)今後も楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします！^^ (2016年9月16日 17時) (
レス) id: 8eb81026be (このIDを非表示/違反報告)
リン - めっちゃ面白かったです。ありがとうございました。 (2016年9月15日 6時) (レス) id: 7578393967 (このIDを非表示/違反報告)
橋姫(プロフ) - 春介さん» 春介さんコメントありがとうございます！私には勿体無いお言葉(´；ω；｀)嬉しいです！今後も是非よろしくお願いします^^ (2016年6月18日 20時) (レス) id: 8eb81026be (このIDを非表示/違反報告)
春介 - もう格好良さの塊と可愛さの塊ですね。主人公が可愛いらしいです。最初から読む価値ありますよ。ヘ(≧▽≦ヘ)♪ (2016年6月18日 20時) (レス) id: 48065eba43 (このIDを非表示/違反報告)
ヴァン - 遅くなってすみません！本当ですか!?続編とても楽しみにしてました！言葉で表せないくらい、めっちゃ嬉しいし、この小説大好きです！頑張って更新してください！！！ (2016年2月15日 20時) (レス) id: a98225ac2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：橋姫 | 作者ホームページ：http://yumenoukihashi.himegimi.jp/
作成日時：2015年11月29日 20時
