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鬼狩り2 ページ3

「……冨岡さん」


名前を呼べは冨岡は無言で頷き、二手に別れている道の右側に走っていた。


別に良いんだよ。行動力があって非常に。ただね、一言返事をしてもいいんじゃないかなって思うんですよ。なんて思いつつ、生暖かい目で冨岡が進んだ道を見る。冨岡は仕方ない。言葉足らずで無表情。諦めよう。一つ頷きAは、もう一方の道へと進んだ。




嘴平伊之助は死を覚悟していた。


クモ頭の鬼に頚椎を握りつぶされ、呼吸が上手くできない。苦しくて暴れようにもそんな体力は残っていなかった。


薄れゆく意識の中、涙を流し伊之助の名を呼ぶ女性を見た。悲しそうな顔の炭治郎と善逸。最後に浮かんだのは宿でお世話になったお婆さんの顔だった。


女性の正体が分からないまま伊之助は口から大量の血を吐き出した。


──もう、ダメだ。本気でそう思った瞬間。


鬼の腕が切れた。


ギャウ、と小さな悲鳴を上げた蜘蛛頭の鬼。


手が切り落とされたことにより伊之助は自由の身となった。


倒れた視線の先に一人の女性がいた。


赤黒い血のような髪色が特徴的な女性は、伊之助を見ると困った様な笑みを浮かべた。


だが、それも一瞬の事で冷たい眼差しを鬼に向ける。


切られた腕が回復した蜘蛛頭の鬼は、物凄い速さで女性の元に走る。


しかし、女性は焦ることなく刀を構えた。


(鬼の呼吸 参ノ型 月鬼)


その太刀筋はあまりにも力強く、そして繊細だった。


伊之助は高まる高揚を抑えきれず、怪我の事も忘れ女性に鼻息を荒くして話しかけた。


「俺と戦え赤黒女!!」


「あー、ごめんね今は仕事中で無理なんだ。その前にキミはすごくボロボロだから傷を治さないと」


「そんな事は関係ねぇ!!俺とー」


その先の言葉は続けることが出来なかった。


いつの間にか伊之助は木に縛られて居たのだ。しかも、絶妙な高さで。


縛った当の本人は『本当にごめんね。こうでもしないとキミは止まらないと思って』と呑気に笑っている。


「あ、それと猪少年」


伊之助が呼び止める声を無視してした女性は、突然振り向き人差し指を口元に当てイタズラっ子の様に笑った。


「私の名前はAA。赤黒女じゃないよ」

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作者名:あめだま | 作成日時:2019年7月13日 15時

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