鬼狩り1 ページ2
お館様の元まで向かう様にと鎹鴉に言われたのはつい先程の事である。
任務が終わったばかりのAは、報告書を書いていた手を止め『まじかよ』と割と絶望した声が出た。
だが、お館様の命令は従うのが絶対である。溜息と共に立ち上がり、Aはお館様である産屋敷耀哉の元に向かった。
「失礼致します」
お入り。お館様にそう言われ、Aが部屋に入ると同じ柱の冨岡義勇と胡蝶しのぶが既に居た。
しのぶはいつもの様に笑みを浮かべると、Aに会釈する。冨岡は相変わらずの無表情である。
冨岡の隣に座ったAはお館様の膝に居る鎹鴉を見て眉をひそめた。
いつもと明らかに様子が違う。
Aは嫌な予感がした。
柱が三人に様子の可笑しい鎹鴉。
「よく頑張って戻ったね。私の子供たちは殆どやられてしまったのか。そこには十二鬼月がいるかもしれない。柱をいかせなくてはならないようだ。義勇、しのぶ、A」
悶々と考えているとお館様に名前を呼ばれた。
三人の背筋は無意識の内に伸びる。
「「「御意」」」
「人も鬼もみんな仲良くすればいいのに。冨岡さんとAさんもそう思いません?」
「無理な話だ。鬼が人を食らう限りは」
(お腹空いた)
任務明けのAは一人だけ場違いな事を考えていた。
「A」
「は、はい!!」
産屋敷に名前を呼ばれ、声を裏返しながら返事をする。視界の隅でしのぶが肩を震わせているのが見えた。恐らくAの返事が面白くて笑ってるのだろう。
「任務明けなのに済まない」
まるでAの心情を悟った様な言葉だった。
「お心遣い痛み入ります」
思わず泣きそうになったAは慌ててお辞儀する。
三人は十二鬼月が居るであろう、那谷蜘蛛山に向かっていた。後からしのぶの継子であるカナヲと隠がくるだろう。
「目的の場所に着いたら、しのぶちゃんは怪我人の救護を優先して。もちろん鬼にあったら必ず殺すこと。冨岡さんは私と鬼の殲滅に徹する」
「分かった/分かりました」
一番長く柱をしているAの指示は的確である。
しのぶと冨岡は素直に指示に従うことにした。
「じゃあ行くよ」
その掛け声で三人は音もなくその場から姿を消した。
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作者名:あめだま | 作成日時:2019年7月13日 15時