煙草 ページ18
真選組屯所内
歳関係なく皆が酒を飲み、そのほとんどが自我を失っている。
局長 近藤勲に関しては全裸である。
この宴会の主役 卯月雅は、困惑していた。
年上のおじさま方からのわけも分からない話を手短に、且つ丁寧に返し、外の空気を吸いに行く。
「すまねぇな。うちの連中が」
誰も居ないと思っていた為少し驚いたが、少し落ち着く低音の声の主は直ぐに分かった。
副長 土方十四郎である。
綺麗に浮かんだ月を見上げながら煙草を吸う姿は、誰もが目を奪われる程に美しかった。
『いえ、寧ろありがとうございました。こんなに大きな宴会を開いていただいて』
感謝の言葉を述べ、彼女はいつもより軽い着物から、煙草の入った箱と、ライターを取り出す。
「ほぉ、お前も吸うんだな。」
『まぁ』
少し会話を重ね、彼の横に並ぶ。
「隣、失礼しますね」
彼女もまた、月を見上げながら、煙草を吸い出す。
『どうしました? そんなに見ても何もないですよ?』
手に持った1本を吸い終わり、もう一度吸い出す手前に声を出す。
横にいた土方は、片手に煙草を持ったまま、彼女の顔を見つめていたのだ。
「そんなに見てたか。すまねぇな。ただ、月と煙草吸ってるてめぇが妙に綺麗だったからよ」
『あら、それは私に見惚れたって事で?』
「__そういう事だろうな」
『でも、土方さんこそ月と相まって、綺麗でしたよ? 街の方々が見れば、皆が振り向くほどには』
「同じじゃねぇか」
『ふふっ、そうですね』
本当に今日会ったばかりの2人かと思うほどに、仲が良くなっている。
上司を慕い、部下を持つ、上の立場のもの同士気があったのだろう。 会話だけ聞けば、恋仲のもの達のようだ。
「おめぇさんの場合、煙管も合うんじゃねぇか?」
少し会話を交わした後、いきなりの土方からの質問に、彼女は笑みを漏らす。
『それとおんなじことを5回ほど言われたことがありますよ』
「ほぉ、誰から?」
『友人です。1人は今もよく飲んだりしてますけど、もう1人は会う度に喧嘩ふっかけて来ますよ』
彼女の言う’友人’とは、中原中也 太宰治の事である。
「そうか。で、答えは?」
『いつも同じですよ。【私が煙管を持つと、遊女に見えるので嫌です。持ち歩くのも面倒ですしね】』
「ハハッ そう考えりゃ、そうも見えるな」
『飲み直します?他の方々、ほとんど沈んじゃいましたよ?』
「そうだな。ついでに、片付けとくか」
こうして、夜は明けて行ったのだった
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作者名:歩夢 | 作成日時:2019年8月5日 21時