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片付け終わって、俺はスーパーに買い出しに行ったり、他愛ない話をしたり、映画なんか観てみたり。
買い出しに関しては、伊野尾ちゃんには休んでて欲しかったから1人で行った。
ゆっくりとした1日が過ぎていく。
伊野尾ちゃんは、あまり笑ってくれなかった。
無理もない。
実は昨夜、毛布を取りに行った時に見てしまったんだ。
毛布はすぐ分かったけど、その脇にダンボールがあって、蓋の隙間から白いものが見えて。
嫌な予感がして勝手に開けてみたら、結構大きめのダンボールなのに、いっぱいに詰まっていた白い手紙の山。
あのストーカーのやつ。
ゴミ袋の中身を見られて、写真が悪用されでもしたら大変なことになるからと、ヘタに捨てられなかったのではないだろうか。
これが、伊野尾ちゃんの苦しみと痛み。
「伊野尾ちゃん、明日雑誌撮影だけど、大丈夫そう?」
「……うん、頑張るよ。
大丈夫、明日にはいつもの、アイドル伊野尾慧になる。
やまだがこんなに、俺なんかのためにやってくれたんだもん」
伊野尾ちゃんの目は暗いままだった。
キラキラした、いつもの目は最後まで見れなかった。
さすがに俺は帰らないといけなくて。
明日の撮影の準備があるし、服も着替えないといけない。
「……それじゃ、伊野尾ちゃん。
俺は帰るからね。
明日、ムリしないで」
「うん、本当に、迷惑かけてごめんねやまだ……」
終始謝る伊野尾ちゃんに、ちょっとだけイラッとした。
俺は、謝ってほしくてこんな風にしてるわけじゃない。
「迷惑なんかじゃないから。
伊野尾ちゃん、俺たち何年一緒にいると思ってるの?
こんな風に傍にいるの当たり前なんだよ。
助け合ったりするの、普通のことなんだよ。
だからもう、謝らないで。
迷惑だなんて思ってないし、何があっても俺は……俺たちは傍にいる。
俺たちメンバーなんだから。
欠けたりして欲しくないんだよ」
伊野尾ちゃんは、俺の言葉に目を見開き驚いていた。
そのあと、泣き笑いのような複雑な表情を浮かべて。
「……うん、がんばるね」
そう言った。
気まずいような感じがして、じゃあ帰るね、と小さく言えば、うん、また明日ね、と返って来た。
ドアが閉まる音が響く。
……俺の言葉は伊野尾ちゃんに届いたのかな。
俺の気持ちを、伝えたつもりなんだけど。
伊野尾ちゃんを、救いたいということを。
伊野尾ちゃんに欠けて欲しくないということを。
……その、つもりだった、のに。
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りりた(プロフ) - ☆しんちあけい☆さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです(о´∀`о)もう一度だなんてすごく光栄です!完結しましたが番外編を短いですが書こうかなと考えてますので、また覗いてやってください! (2017年3月2日 21時) (レス) id: 617a50f5a2 (このIDを非表示/違反報告)
☆しんちあけい☆(プロフ) - …一気に全部読みました。すごく面白かったです!自担が危ない目に遭っちゃう系大好物なんで笑…ちょっと、もっかい読み直してきます笑 (2017年3月2日 21時) (レス) id: e93827b7b3 (このIDを非表示/違反報告)
りりた(プロフ) - JUMP大好きな白米と猫さん» コメントありがとうございます!山ちゃんは傷ついた伊野尾ちゃんにはとことん優しくを目指してます(笑)亀更新ですがこれからも楽しんで頂けたら幸いです(*^^*) (2017年1月9日 5時) (レス) id: e887fbde8e (このIDを非表示/違反報告)
JUMP大好きな白米と猫(プロフ) - 山ちゃんマジ優しい!!感動…!(´;ω;`)伊野ちゃんを助けてあげて! 続き待ってます(*'▽') (2017年1月9日 0時) (レス) id: f122806c5b (このIDを非表示/違反報告)
りりた(プロフ) - ほのさん» コメントありがとうございます!はい、頑張ります(*^^*) (2017年1月3日 13時) (レス) id: e887fbde8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りりた | 作成日時:2016年12月6日 22時