くれぐれも内密に(3) ページ10
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バタンと、私の楽屋のドアが閉まる音。
それとほぼ同じタイミングで、私は叫ぶ。
「あのっ!紛らわしい言い方やめてくださいよ!」
『くまくん』さんこと、朔間凛月さんに。
凛月さんは紅い瞳を細めて、小さく笑う。
「別に紛らわしくないじゃん、やましいことはないんだし」
「やま……っ?!そ、そうではなくて!」
私が必死で話してると、突然距離を縮めて
動けば当たってしまいそうになる。
そして、心底おもしろそうに言う。
「お望みなら構わないけど?あんたを取って
セッちゃんがどんな表情するか、結構気になるし」
一瞬たじろぎかけるが、ぐっと抑え込む。
足を半歩下げて、思い切り脛を蹴った。
当然、凛月さんは声にならない叫び声を上げ
蹲った状態で私を睨みつけた。
……いや、あなたが悪いんでしょうが。
「……ふふっ、そういうのセッちゃんそっくり」
「……なんですか、急に」
突然笑いだしたかと思えば、私を指差していう。
そして、呟くように「良かったね」と締めた。
意味を聞こうとするが、手をひらひらと仰がれ
追及することを軽く止められてしまう。
さっきまでの飄々とした態度とはうってかわり
視線を鋭くこちらに向けた。
私はその迫力に少し小さくなった。
「……夢ノ咲学院の遣い手、なんて言ったらいいかな〜」
「遣い手?夢ノ咲学院の……?」
「そうそう、スカウトっていう言い方もありだね」
「……スカウトって、まさか」
私の心当たりを呟くと、凛月さんはふーんと鼻を鳴らす。
「口だけじゃないんだ〜」と、何故か馬鹿にされてる。
しかし同業者なら対応を変えなければ。
サッとスイッチを入れ、顔を上げる。
「申し訳ありませんが、そのお話は」
「知ってる、だから来た」
近くにあった椅子に腰掛けた凛月さん。
彼は「生徒会長がさ」と続ける。
「かなり気に入ってるみたいなんだよね、あんたのこと」
「……本業を潰してまで受ける気はありません」
「だからってこっちも簡単に引かないよ
何せ、もう時間があまりないからさ」
そう言いながら鞄から書類を取り出し、私に差し出す。
それを受け取って、目配せで読み込む確認を取ってから開く。
書類は提案書で、その内容に息を飲んだ。
「エッちゃんにここまでさせるのは相当だよ」
凛月さんは足を組んで、口角を上げていう。
「同じものを事務所にも送った、後はそっちで考えて」
──まぁ、答えはひとつだろうけど。
立ち上がった凛月さんは、そんな捨て台詞を口にして
私の楽屋を、後にするのだった。
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莉緒(プロフ) - すいかさん» 返信遅くなりすいません!コメントありがとうございます!これからも面白いお話が出来るよう、頑張ります! (2018年11月7日 22時) (レス) id: 013457e9b7 (このIDを非表示/違反報告)
すいか - 面白いです!! (2018年10月24日 6時) (レス) id: 1cbfe77de4 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 愛姫さん» コメントありがとうございます!これから楽しんでいただけるよう、頑張りますね! (2018年1月25日 17時) (レス) id: 9db52594cb (このIDを非表示/違反報告)
愛姫 - いつも楽しみに見てます!!これからも頑張ってください!! (2018年1月25日 13時) (レス) id: 43b6895a40 (このIDを非表示/違反報告)
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