前途多難(3) ページ16
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「そうか、それであんなに大騒ぎしてたんだな」
そう言ったのは、夢ノ咲学院の保健医の佐賀美陣さん。
職員室に案内され、佐賀美さんが席に着くでは半信半疑だったけど。
それもこれもこの人の容姿が、私の知る限りでは『先生』ではなかったからだ。
まぁ……その事はあえて口には出さず、ひとまず私は頭を下げる。
「いいっていいって、俺じゃなかったらやばかったけどなぁ……特にあそこのあきやんだったらな」
そう言いながら、メガネをかけた茶髪の人を指さす。
気づいたらしいその人は、小さくため息をついてこちらに歩み寄る。
レンズ越しの目は想像以上に厳しく、つい体を縮こませた。
「まったく、他の生徒にいい迷惑です。……その人は迷惑に思ってないようですが」
あ、レオ君だったか。私も言われてるけど。
呑気なこと思いながらレオ君を見る。相変わらず作曲中。
職員室でさえ変わらぬ彼の対応に、もう何だか色々域を超えて脱帽しそうだ。
「……緑川さん、聞いてますか?」
「あっ!すいません聞いてませんでした!」
突然椚さんに呼ばれて、直立不動な形になる。
それをみた佐賀美さんは、盛大に吹き出して笑う。
「なんだよそれ、素直なやつだな〜」
あ、この人笑うとめちゃくちゃかっこいい。
「はぁ……人の話は最後まで聞きなさい」
この人はなんか、伏せ目がちにするといい。
さっきも教室の横通った時生徒さん見たけど、誰も彼もかっこよかった。
……やっぱり、アイドル科なんだな。
「では、あなたの書類は全て確認させていただきます」
「は、はい!これから、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくお願いします、『プロデューサー』」
「ぷろでゅーさー……」
そうだった。私、プロデューサーになるんだ。
練習したとはいえ、歌もダンスもあんなんで、大丈夫かな。
……っていうか、私オーディション落ちた身なのにここにいていいのだろうか。
どうしよう、なんか色々不安になってきたかも……。
「あっ!」
「どしたー?もう帰っていいぞー」
「あ、ありがとうございます。でも、最後に私の『先輩』に挨拶していいですか?」
そうだ。私より先に入った『プロデューサー』がいるじゃないか。
その人にある程度やり方聞ければ……!
「あー……その事なんだが……」
頭をポリポリとかいた佐賀美さんが、そういってお茶を濁す。
すかさず椚さんが、やれやれといった調子で告げた。
「彼女は今、入院中なんです」
「……え、」
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莉緒(プロフ) - すいかさん» 返信遅くなりすいません!コメントありがとうございます!これからも面白いお話が出来るよう、頑張ります! (2018年11月7日 22時) (レス) id: 013457e9b7 (このIDを非表示/違反報告)
すいか - 面白いです!! (2018年10月24日 6時) (レス) id: 1cbfe77de4 (このIDを非表示/違反報告)
莉緒(プロフ) - 愛姫さん» コメントありがとうございます!これから楽しんでいただけるよう、頑張りますね! (2018年1月25日 17時) (レス) id: 9db52594cb (このIDを非表示/違反報告)
愛姫 - いつも楽しみに見てます!!これからも頑張ってください!! (2018年1月25日 13時) (レス) id: 43b6895a40 (このIDを非表示/違反報告)
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