14日目 ページ14
『…』
「どうしたん、元気ないな」
『……何でもない』
「なわけないやろ、あの女に嫌なことでも言われたんか」
『そんなわけない』
とっさに食い気味で答えてしまった。
ハッとして顔を上げれば、不機嫌そうな顔のロボロがこちらを見下げていた。
「…気に入らへんなぁ」
『っ、…お願い、あの子には何もしないで…!』
「それはA次第やろ、殺すも殺さないも、全部」
『っ…』
「忘れたらあかんで、俺らはお前のことだけが好きやねんから、裏切ったらただで済まんのはわかるやろ?」
『…は、ぃ』
「ん、いい子」
そのまま、優しく口づけをされる。
綺麗な薄ピンクの目が細められて、その鋭い視線に背筋が凍りそうだ。
腰に回された腕によって引き寄せられ、更に深く溶かされる。
目を閉じれば、溜まった雫が零れ落ちて。
頰に添えられた彼の手を濡らした。
『…ごめんなさい』
「ええよ、もう怒ってへんから」
『…しよ、ロボロ』
彼の首に腕を回して、自ら彼を求めるような言葉を投げかければ、満足気に笑いながら服を捲られる。
この憎悪が気づかれていないわけではないのだろうが、ここまで従順に彼らの愛とも呼び難い欲を受け止めてきたのだ。
縛られた人生。
やっと、この鎖を解けるペンチを見つけた。
「好きや、A」
『…ええ、私も』
でも、彼らの保険はそう簡単に安くはなかった。
まさか、シイナみたいな女兵を推薦するとは思わなかった。
彼らの意図が読み取れぬ以上、彼女をおいてはいけない。
彼女をよく思っていない彼らとあの子を共に置いて行って仕舞えば、彼らの感情の矛先は彼女へと向かうかもしれない。
優秀で私を慕ってくれる彼女のことだ。
きっと、私についてきてくれる。
『…好きだよ』
その言葉に嘘偽りなどない。
共に国を立ち上げてきた仲間なのだから。
だけど、この憎悪も嘘ではないから。
回した腕にこめた力。
この力を、私はナイフを握る力には変えることはできないから。
だから、懲りずに逃げる私を、どうか追いかけないで。
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ぱずる(プロフ) - 感動してボロボロ泣きましたwなんと言えばいいのか分かりませんが、とても素敵なお話でした。面白かったです!! (2021年4月30日 1時) (レス) id: 6fda5d1ca9 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - みみみさん» コメントありがとうございます。返信が遅くなってしまい申し訳ありません!書き終えてから少し走り気味だったかもと反省していた部分があったので、好きという言葉をいただけて本当に嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - わたあめさん» コメントありがとうございます。返事が遅くなってしまい申し訳ありません!走りが気になってしまった部分もあり少し心残りのある作品だったので、そう言っていただけると嬉しいです!他の作品もよろしければ見てやってください。 (2020年3月6日 0時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
みみみ - やっと見つけました! 本当に好きです! (2020年2月16日 17時) (レス) id: a3e96579f7 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 初コメ失礼します…?感想っていうか…この話本当に好きです。他のどんな話よりも。本当に。作者さんに尊敬の花束を。 わたあめ(語彙力溶けた) (2019年7月31日 11時) (レス) id: 058dc021e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月9日 19時