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「化粧上手なったよな、A」
「最初から上手かったやろ」
「時間短くなったやん、前までめちゃ時間かけとったし」
メイクを教えたのも自分だ。
どんなものを買ったほうがいいのか、とか、やり方がわからない、とか、実際どんな感じがいいのか、とか。
わからないことだらけで不安なのはわかるが、何となくでしか知らない俺に何故聞いたのかは未だに不明である。
彼女のメイク直しの時間とかは確かにどれくらいかは知っていたし、時々いつもと違うねと聞けば、得意げに説明しだすので、メイク用品は何となく頭の中に入ってはいたが。
それこそオスマンに聞けばいいのに、とは思った。
「最初より最近の方が薄いやんな」
「濃いとまではいかんけどな、今の方が確かに好みやわ」
「美術苦手やったんに、何でメイクだけは上手かったんやろな？」
「練習したんちゃう？」
「美術も練習しとったけどなぁ…」
最初の頃は、まあ確かに酷かった。
俺もまじまじと女の子の化粧シーンを見るのは初めてだったが、明らかに下地から厚すぎる。
動画を見ながらやっても、全く上手くいかない。
わからない、と葛藤した故に、動画投稿者の説明が下手なのではないかと言い出し、仕方ないので、動画の真似をしながらAに俺がメイクをしてあげた。
その動画投稿者の人はかなり丁寧な説明なのでわかりやすかった。
俺も美術は得意な方ではなかったが、ある程度はできた。
それから、一緒に動画見ながら練習したり、違和感があれば指摘したり、彼女の聞き流していたメイクの話をしっかり聞いたり。
「美術と化粧って直接的なあれはないんちゃう？」
「まあそうか」
最初は動画通りにメイクをしていた。
皆で遊びに行く時もメイクをしてくるようになり、皆にちやほやと言われて、また、こうしたらええんちゃう？みたいな好みまで言われていたが、そのアドバイスを取り入れていたところは見たことがない。
ただ、今まで一緒に練習していたからなのか、俺が、あの動画の人はこのメイク似合うけど、Aはもう少し薄い方が似合いそうやんなと言えば、次の日からすぐに薄くなった。
結果的には良かったのだが、デリカシーが無かったのかもしれない、と思って、あの時は少し複雑な心境だった。
『ごめん、お待たせ』
「待ってへんよ」
「Aメイク変えたんやな」
「え、そうなん？」
『うん、ちょっとだけ、よく分かったね、鬱』
「流石大先生」
いつも見ていたから、とは言えない。
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年4月4日 4時
