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『はい、エーミール、あげる』

「ありがとう、大事にするわ」

『ちゃんと中身見てから言ってや、エーミールお人好しすぎんねん』

「そんなことないで、何でも嬉しいです」

「でもゴキブリのぬいぐるみは流石に怒ってもええと思ったで」

『うちも冗談で渡したら普通に笑顔でありがとう言われてびっくりしてん、エーミールのお人好し舐めとったわ』


エーミールの誕生日を祝う。
とは言っても、大体皆ゲームしたりして遊んで騒ぐだけなので、遊びに行くのと何ら変わりはない。
いつもと違うところといえば、プレゼントを持ってきたり、少し多めのお菓子を持ってくるところくらいだ。


『お腹空いたなぁ…皆どう?お腹空いとる?』

「ぼちぼち」

「もう6時半やもんな、何か頼むか?」

『エーミール、冷蔵庫に食材ある?うち作ったるよ、何食べたい?』

「え、ほんまですか、でも今食材切れとるんよな、まともに作れんで」

『じゃあついでに買い出し行こか、鬱、行こ』

「ん」


薄々呼ばれるかな、と期待していて、呼ばれてから軽い返事をしてすぐに立ち上がった。
財布と携帯をポケットに入れて、Aと夕飯のメニューを話し合いながら外へと出かけた。


***


「大先生変わったなぁ…」

「あいつ全員と別れたもんな、この前頰腫れとったわ」

「大切にせんかったら切れたろ思っとったんに、良いのか悪いのか…」

「え、何なん、今更ショック受けとるん?」

「Aに好きな人いるって、中学の頃には気づいてたよ」


オスマンとひとらんがまるで当然とでも言うかのような口ぶりでそう言うものだから、つい口があんぐりと開いてしまう。
いやいや、お互いそんな素振りなかったやん。


「え、お前ら気づいとったん?」

「マンちゃんと俺は何となく、それからはAのことは妹みたいに見てたよ」

「何で止めへんねん…」

「止めてもどうにもならんやろ、Aの気持ち踏みにじったらあかんのやから」

「やっぱ俺の勘あっとったやんけぇ…!」

「まあええやん、Aは幸せやし、大先生もこれで更生したわけやし」


どこか腑に落ちないが、死ぬほど落ち込んだわけではないのが自分でも不思議だ。
実際、いつからか薄々と感じていたのかもしれない。


「でもまあ、傷つけた瞬間漬け込むで、俺は」

「いやいや、お前だけやないやろ」


まだ完全に、諦めたわけではないのだから。

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作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時

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