検索窓
今日:2 hit、昨日:19 hit、合計:32,738 hit

12 ページ12

『鬱、お弁当』

「ん?あ、今日もありがとな」

『いちいちお礼言わんくてええよ、うちが好きでやってんねんから、あと、なんかもう癖みたいになってもうたし』

「おい待てや、やっぱりその弁当Aのやんけ」

「ふざけんなや、よこせこの野郎」

『ゾム』

「何やねん、俺は今忙し…」

『あーん』

「っ…あーん…」


弁当を狙ってきたゾムをおさめるように、いつもなら強請られてからしないあーんも、自らやった。
しかも、ゾムのお気に入りのだし巻き卵で。
美味しそうに食べているが、何処か不満気で、上手く躱されてしまったからなのか、いつもなら美味い美味いと褒める言葉も、今日は出てこないようだった。


「大先生いつか殺したんねん…」

『うち泣くで』

「…Aが死んだらすぐにあと追わせたるからな」

「妥協してくれた」

「食害も妥協してくれませんかね」


すかさずトンちがそう呟けば、目をギラつかせて食害が始まった。
Aはそれを一種の風景としか見ていないのか、真顔で見つめ続け、ご飯を食べ進めている。
俺はそんなAを景色に食べる。
もう恥じらいなんかないわ。


『…ん?どしたん、そんな見て、ソースついとる?』

「ついてへんよ、見とっただけ」

『…バカップルみたいなこと言わんといてや』

「朝のもだいぶバカップルやったで」

『え…もうあれせんとくわ』

「何で?嬉しかったで?」


首を傾げて聞けば、複雑そうな顔になり、返答はなく、また食害を見つめ出した。
無視されたんやけど、付き合って1日目に。
軽いショックを受けながらも、気にしないフリでご飯を食べ進める。
すると、ふい、Aが近くまで寄ってきた。


『…バカップルって、すぐ別れるんやろ?』

「続くバカップルもおるで?」

『……確率の問題やねん』


自分から近づいてきたのに、今朝のようにそっぽを向いてしまうのだから、可愛くて仕方ない。
バカップルみたいな言動をすると、すぐに別れると思ったのか、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
そんな姿も愛らしく、少し意地悪をしたくなった。


「じゃあ、手繋ぐのやめよか?」

『ぇ…』

「バカップル嫌なんやろ?極端やけど、ハグもちゅーもやめとこか?」

『…』


自分の意図がわかったのか、軽く目で怒りを訴えられるが、気の持ちようの問題でもあるので、ここはぐっと堪える。


『…嫌や』

「うん、俺も嫌やわ」


彼女は心配性のようだった。

13→←11



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
118人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:そういろね | 作成日時:2019年4月4日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。