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「喧嘩屋でしょ?」
そうやって偉そうに指を差した女こそが
蘆名Aであった。
Aがバラガキと呼ばれる土方の名前を知っていたのにもちゃんと訳があった。
Aも喧嘩屋だったからだ。
道場に来ない理由も、喧嘩を売っては金を巻き上げるなんて田舎ならではのチンピラ商法をしていたせいで
道場に顔を出す事が滅多に無くなっていた。
そして近藤に事情を説明されるとAは土方を見て嬉しそうに笑った。
「じゃ、やっぱり噂通り強いの…?」
「女との斬り合いなんて興味無ェ」
「あんたは無くても私はある」
面倒臭い、関わる気すらしない。
そもそも女が男に勝てる訳が無い、だから比べたって意味が無い。最初はそう思っていた土方だったがその日以来Aは毎日道場に来るようになった。
そんなある日。
「ねえ」
稽古の休憩中、竹刀を片手に土方の顔を覗き込むA。
「私、あんたよりも強いかもしれないでしょ?」
これまでのAの様子が土方の頭の中にフラッシュバックした。太刀筋も刀遣いもチンピラとはどう見ても比べ物にならない。
____確かに、こいつは他とは違う。
「…んな訳無ェだろ俺の方が強い」
「っ、あんた自意識過剰も程々にしなさいよ!」
「当たり前の事言ってただけだ」
「そこまで言うなら勝負よ!!ずっと我慢してやってたけどね!」
Aとの勝負をもちかけられるとだんまりを決め込む土方。それに構わず挑発を重ね何度も土方に減らず口を叩くAだったがそれも数分すると終わった。
「…もういいわ、アホらしくなってきた」
Aはため息をついてその場を去ると思えば立ち止まり土方に背を向けながら話す。
「私、強くなりたいからって喧嘩はしないの
それなら道場に来て毎日稽古するし、その辺のチンピラ殴ったりなんかしない」
「…最近顔出すようになった理由がそれだってのか?」
「ははっ、そうだよ。
私あんたに喧嘩買ってもらう為に毎日稽古してるの」
馬鹿馬鹿しい、なんて誰もが思うだろう。
たった1人の元喧嘩屋に喧嘩を買ってもらう為だけに何ヶ月も毎日道場に来て自分の力を見せつける。
ただの”喧嘩好き”なんて言葉じゃ足りないだろう。
しかし結局江戸を出るまでも出てからも土方が喧嘩を買うことは無かった。
そして、その延長線上にあるのが数年後の今の2人だった。
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阿呆代表の神(プロフ) - なんやねんこの凄い作品は。有料でも良いくらい素晴らしい作品。 (2021年3月9日 21時) (レス) id: 10eaece567 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです( ; ; )更新頑張ってくださいーー! (2021年2月1日 1時) (レス) id: e52e19fe2f (このIDを非表示/違反報告)
れんか - めっちゃ面白い(笑)更新頑張ってください! (2021年1月29日 11時) (レス) id: b5b9f86a00 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちーずなん | 作成日時:2021年1月28日 23時