番外編 ページ29
僕には双子の妹がいる。
妹のAは美人で評判だ。
優しくて頭が良くてあらゆる才能に恵まれている。
テストは常に一位。
模試だって全国トップ。
僕と同率一位か、時々どちらかが二位か。
学内の成績も良い。
学習面においては僕も羨む程に。
素行も良好。
非のうちどころのない美人中学生。
街を歩けば、老若男女に好かれる妹だ。
そんなAは、出来る妹ー出来妹デキモトである。
だがAは家に帰ってくると美人中学生の面影が1ミリも見えなくなる。
ハムスター(僕には熊に見える)ガウンを着て、体は小さくなる。
そして制服は脱ぎ散らかし。
お菓子は食い荒らし。
ゴロゴロしながらゲームをし。
片付けを一切しない。
グータラで駄目な妹ー駄目妹ダメモトになる。
そんな妹だけど
本当は甘えたがり屋で、よく僕と父に甘えて来る。
そこは可愛いと思っていたりする。
父はどうか分からないけど、Aが言うには、二人になると一緒に遊んでくれたりすると言っているから、あの人もまんざらでも無く、Aを気に入っているらしい。
今回はそんな妹の、お話しを紹介したいと思う。
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それはある休日だった。
朝食が終わると、妹はすぐさま父の座る椅子に向かって飛び跳ねて、父の膝の上に座る。
「パパ、今日はAと遊んでくれる日だよ。
どこか行こうよ!!」
「すまないが、今日は仕事が入ってしまってね。」
「えっ……!」
僕は二人のやりとりを、リビングのソファに座りながら見ていた。
「Aとの約束は?」
「また今度。」
そう言って父はAを抱っこして床に下ろすと、足早に歩いて行ってしまった。
その後ろ姿をじっと見つめていた妹の姿は、悲しそうに見えた。
僕はなんだかいたたまれなくて、妹に近付いて行く。
「パパ……」
独り言を呟き、その場でうずくまってしまった妹。
僕はそんな妹の小さな背中に向けて声を掛けた。
「父さんなんて、放っておけばいいじゃないか。
僕とどこか行こう。」
「えっ!!」
振り返った妹は驚きの表情をして、でもすぐに嬉しそうに笑う。
「いいの!!」
「ああ。」
了承を伝えれば、妹は僕の体に飛びついた。
まるで木に抱きつくコアラの様に。
「やったお兄ちゃんと遊べるよ!!」
僕は妹の頭を撫でた。
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壱(プロフ) - ちくわさん» コメントありがとうございます。嬉しいお言葉を下さり、励みになります。悪の大罪シリーズについてですが、実は知らなくて、すいません……。「悪の娘』とかがあると名前だけは聞いたことがありますが、分からないです。おススメ作品ですか? (2018年6月1日 21時) (レス) id: eca00d5e47 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ - 面白いです! 悪ノ大罪シリーズとか知ってたりしますか? (2018年6月1日 17時) (レス) id: ae2f86a54b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:壱 | 作成日時:2018年2月18日 8時