43話 ページ45
御幸side
結局先輩とはあの夏祭り以来会えずじまい。練習へ顔を出してくれた3年生に先輩がどうしているのか聞いてもみんな答える言葉は「知らない」の一言だった。
そして、今日始業式を迎えた。
(……先輩に会ったら問い詰めてやる。)
来ると言ったくせに来なかったんだから多少いじめるのは許して欲しい。
先輩に会えることにわくわくしつつ、校舎へ向かった。
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「あー、始業式だりぃな。」
「そーだな。」
倉持と話しながら昇降口の方へ向かっていると、急に騒がしくなる正門。
「あ、なんだ?」
倉持も気づいたようで正門を見る。
そこには1台の高級車が止まっていた。青道は私立だが、そんな金持ちが通っている学校ではない。唯一の金持ちといえば、先輩くらいだろう。
まぁ、あの人が車で登校なんて見たこともないが。
それなら転校生だろうか、とそちらを見続けていると1人の男が車から出てきた。その途端悲鳴の様な女子の声が聞こえる。……どうやらイケメンのようだ。
……でも、次の瞬間そんな悲鳴のような声は一瞬で俺の耳に入らなくなった。
車にはまだ人が乗っていたようでもう1人が降りてきた。
「……A先輩?」
自分の目を疑った。あの先輩が男と同じ車から降りてきたこと……そして、2人は腕を組んで歩いていること。
何が起きているのか理解ができない。次第と近づいてくるその2人。動きたい。今すぐこの場から逃げ出したい。……でも、嘘みたいに体が固まって動かない。
それからゆっくりと先輩が俺の前を見向きもしないで通り過ぎる。
唯一出た「……先輩!」という声すらも先輩には届いてなかった。
「おい、御幸あれどういうことだよ!!」
隣で倉持が騒いでいる。……でも今の俺にはそれに反応している余裕はなかった。
ズキズキ痛む胸。
あの日の夏祭りは一体なんだったのだろうか。
もしかして、夢だったのだろうか。夢なら俺のスマホには先輩の連絡先はないはず。
震えそうな手でスマホを開き、連絡先を見る。
そこには……
『芝山A』
としっかり名前がしっかりと刻まれていた。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月16日 20時