42話 ページ44
最初からゆっくりと見ていく。前半は母が学生の頃苦悩や思い出が書かれていた。…まぁ、読む限りかなり自由人なようか気がする。
そして、後半の方になると、私の実の父との出会いが書かれていた。
『ーーー大学で出会った野球部の男の人。初めて私を財閥の令嬢と知っていても普通に接してくれた。……嬉しかった。また、話したい。』
ここで初めて知る父と母の出会い。父はプロ野球選手だった。大学を出たあと、プロの道を選んだと聞いてはいた。
そして、ここからはほとんど父のことについて日記では書かれていた。
父の試合を見に行ったこと、人手が足りなくて野球部の仕事を手伝った事……。
そんな日記の中でひとつ目を引くものがあった。
『2人で出かけた。いろんなものを食べた。始めてみる彼の様々な顔。笑顔に胸が高鳴った。……私は気づけば彼に恋をしていたようだ。』
ピクっと指先が反応する。
母の日記の内容と私は全く同じことを知っていたからだ。
あの日……御幸と出掛けたこと。2人で焼きそばを食べたこと。今まで見たこと無かった御幸の表情。……そして、御幸の笑顔に胸が高鳴ったこと。
心臓の音が激しくなる。胸が苦しくなる。
違う、そんなことない、と否定したかったが『御幸を好きだ』という認識が私の中にスンナリと入り込んできた。
(……御幸が好きなんだ私。)
……でも、気づくのが遅かった。もう私は御幸のそばに居られないのかもしれない。このまま何事もなく進んでいけば私は渋谷玲夜と結婚するハメになるのだから…。
それに御幸への気持ちを認識した今御幸にどうやって顔を向ければいいのだろうか。御幸が好きなのにほかの男と結婚するなんて、最低なことだ……。
……だから、私に残された選択肢は1つだった。
ーーーー御幸一也を諦めること。
それしか無かったのだ。
……でも、会わない間も何度御幸を忘れようとしても、何か他のことに取り組んでいても、大きくなるこの気持ち。
ーーーーーそして、夏が終わった。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月16日 20時