35話 ページ37
……
「おじさん、二人分ね。」
そう言ってお金を払う御幸。
「なんで私の分まで払ってんだよ!自分で払うよ!」
「まぁまぁ、ここは男に任せなさいって」
「なんだよそれ…。」
出すと言って聞かないので、今回は出してもらうことになった。
御幸をちらっと見れば「どれ狙おっかなー」と言って景品を眺めている。
「先輩なんか欲しいの無いの?」
「え!?」
急に話を振られて驚いた。「なんでそんなに驚くの…」と爆笑する御幸を無視して景品を見る。
棚にはお菓子からゲームなど、種類豊富。欲しいものといっても絞りきれなかった。
「適当に当たったやつ貰えればいいかな。」
「物欲ないね、先輩。…じゃあ、俺が先輩に似合うの取るから。」
「自分の金なんだから、自分が欲しいやつ取れよ…。」
「俺が先輩になんかあげたいからいいの。」
そう言う横顔はムカつくくらい絵になっていた。
その顔をじっと見つめてしまうと、御幸がそれに気づいたかのように私の方を見る。
「そんな見られると穴あいちゃうよ先輩」
「見てないから!!調子乗んな!!」
「わぁお、すごい嘘つきますね 。さすが先輩素直じゃないな♡そんなに俺の顔みたいならいつでも見てていいですよ?」
「やかましい!!」
絶っっっっっっ対これからこいつの顔マジマジと見ないと心に決めた。
「さて、そろそろやりましょ。」
「…あぁ。」
そう言って銃に弾を詰める御幸。そして、ゆっくりと銃先を景品の方へ向ける。
パンッ!!と音を鳴らしながやまっすぐと飛んでいく。
そして、的のど真ん中へと弾が吸い込まれるように的中した。
「おー、さすが俺。」
「…お前すごいな」
「知ってます♡」
「……」
私も負けじと弾を詰めて狙う…。引き金を引き、弾は飛んでいく。
……が。
なんということか、惜しいどころの騒ぎてはない。全然違うところへ飛んで行った。
「なっ……」
「ぷっ、先輩どこ狙ってんですか」
「うるさい!!今のは練習だ!!」
もう一度弾を詰めて引き金を引く。……が、驚くくらいに結果は一緒。全く違うところへ飛んで行った。
「なんでだ!!」
「せ、先輩しんどいって…!!」
腹を抱えながら笑う御幸。
でも残念ながら私は至って真剣に狙っているのだ。どうしてか、狙ったところの近くにすらいかない。
それは、弾が切れるまで打っても同じだった。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月16日 20時