32話 ページ34
御幸side
「おぉ!!すごい屋台並んでるぞ!!」
キラキラとした目で辺りを見回す先輩。
まさか先輩から夏祭りに誘われるなど予想だにしていなかった。
「なんか食いますか?」
先輩に誘われた嬉しさでニヤけそうな口元を抑えつつ質問する。
「あぁ、なんか食べよう!ほら、いくぞ!」
そう言って先輩から俺の手首を掴んで走り出す。こんな風に俺の前で楽しそうに笑う先輩は久しぶりに見た気がした。
…まぁ、俺が普段からかって怒らせていたからだけど。
先輩は焼きそばが食べたいらしく焼きそばの屋台へ一直線に向かっていく。
まだ早い時間だからか、あまり並んでいない焼きそばを簡単に購入することが出来た。
「おい、御幸!美味そうだぞ!」
そう言いながら割り箸を割る先輩。湯気のまだ出る焼きそばをふぅーと息で冷まさせ、口へ運ぶ。
「…うまい!!」
そして笑顔をさかせる。
(…ほんと可愛いの無自覚かよ。)
そんな先輩をじっと見ていた。すると、
「お前食べないのか??」
「1個しかないじゃないですか。」
先輩は注文のとき1つしか頼まなかった。俺は頼まないでもいいか、と思い買わずに先輩についてきたが、、
「ほら、食べろよ。」と言っていわゆるあーんというやつをしようとしている先輩。
(…またかよ無自覚。)
なんて思いつつも、先輩がこんなことしてくれることなんて滅多にない。して貰えるならやっとかないと損だ。
俺は先輩の持つ焼きそばを口へと運んだ。
「…うまい。」
「だろ!?こんな美味いの初めて食べたぞ私!!」
そう言ってまた焼きそばを食べ始める先輩。
楽しそうにしてくれてよかった…。俺を誘ったのは先輩だが、俺相手じゃきっと仏頂面しかしないのだろうと思った。笑顔を見せてくれるなんて思ってもいなかった。
だからそんな先輩をみてるだけで、自然と笑顔になれた。
「…何一人で笑ってんだよ気持ち悪いぞ?」
「いやー、先輩かわいいな♡って」
「なっ…!!また遊んでんのか!?」
…だからそういう反応がいちいち可愛いいんだよ。逆に俺が腹立つわ…。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月16日 20時