非恋愛対象【御幸一也】 (ページ30)

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28話ページ30

あれから数日、敗戦の悔しさを抱えつつ日々を過ごしていた。私たちにはもう野球部としての肩書きは消え、ただの生徒になった。

……とは言っても結局野球部で集まってしまうのだが。

「……へぇ、御幸がキャプテンか。」

「あぁ、それがチームにとって最善だからな。」

哲から報告を聞くと驚きはしたが、御幸が1番チームのことを分かっているし、適任だと思った。まぁ、御幸にかかる負担はより大きくなるだろうが…。

実をいえばあの日御幸の前でガチ泣きしてから会っていないのだ。…いや、合わせる顔がないが正しいか。３年間を共に過ごした3年の野球部員にですら泣いてるところを見られたことはないのに、まさか御幸に見られることになるなんて…。

どんな顔をして会えばいいのか分からなかった。

どうするべきか、と悩んでいると亮介が口を開いた。

「なに、A。進路にでも悩んでるの？」

「え！？あ、うんまぁ…。」

御幸のことで悩んでましたなんて言えないのでとりあえず肯定する。

「お前頭いいんだから大学なんて選び放題だろ？」

そう口を開いたのは純だった。

「…なんか刺々しい言い方に聞こえるのは私だけか？」

「なんでアホそうな顔してる頭いいんだよムカつくな。」

「おい、本音でてるぞ！」

純とくだらない言い争いをしていると、亮介が結局どうなのか、と質問をしてきた。

「とりあえずは近場の大学に行くつもりだよ。…特別何かやりたい訳でもないし、先生が推薦くれるって言うからそれで行こうかなって。」

「けっ、頭いいやつは楽な進学で羨ましいぜ。」

「純も少女漫画ばっか呼んでないで教科書読めばいいだろ？」

「てめぇぇ！！それは言うなぁァァ！！」

私たちの言い争いを見て笑う野球部たち。少しずつあの日から前に進めているような気がした。

…こうして1歩。また1歩と私たちの卒業までのタイムリミットは近づいているのだ。

(…ずっと高校生でいられればいいのに)

大切な人達とずっと…。

でもそれは私にとっては叶うことの無い夢だった。

……私はこのとき鞄の中でなり続ける電話の音に気づいていなかった。