22話 ページ24
御幸の腕をしっかり掴んだ。逃げられないようにしっかり。
…普通こういうのは男子がやるんじゃないかって思ったけどそんな少女漫画みたいなシチュエーション期待してる余裕すらない。
「…話聞けよバカっ!!」
だいたいの生徒が下校してるのをいいことに私は大きい声で叫んでしまった。
しかし御幸は顔を私の方に向けず、声すら発しない。
「…なんだよお前っ、。今までさんざん私をからかって遊んで、楽しそうに笑いやがるくせに…。告白とか急にしてくるし…。変なタイミングで現れて、ムカつくけど安心させてくれて…。こないだだってどっちかって言うと最初傷つけられたの私なのに、なんか気づいたらキスされてるし…。急に近づかないとか言うくせにジャージ貸してきてっ…!!」
自分でも何を言ってるかわからない。御幸に対する不満なのか、それとも感謝なのか…。言いたいことをまとめる時間がないせいでこの有様だ。
なんとも無様に写っているだろう御幸の目には。
こんな調子で私が話し出すから逆に御幸が焦り出すのが分かった。
「え、ちょっと先輩!?」
そんな御幸すら遮って私はまた声を発する。
「ふざけんなっ…ふざけんなよ馬鹿…。
…でも、でもあの日はごめん…。」
あの日…。それは御幸の気持ちは勘違いだと言ってしまった日のこと。
ずっと心に引っかかっていたのだ。あの時私が言ってしまったことが。御幸の想いが勘違いなわけがなかった。純だって言っていたのに。私をずっと想ってくれていた、と。ちゃんと告白も、してくれたのに…。
いつの間にか私の方に体を向けていた御幸の胸に思わず飛び込んでしまった。
「…お願いだから、元に戻ってよ御幸。」
そう、これが私が1番望んでいたこと。前みたいな関係に戻ること。それが私にとっていちばん心地の良い関係だったのだ。
そしてゆっくりと御幸が口を開いた。
「…ほんと、アンタには叶わねぇや。」
それと同時に御幸が私を強く抱きしめる。
「…嬉しかったんだ。あのメモ貰えて。『普通に接しろ!!』って言葉がいかにも先輩らしくて…。」
そう言いながら笑う御幸。
「…お前今ちょっと馬鹿にしてるだろ!?」
「いや、ただの思い出し笑い」
「それを馬鹿にしてるって言うんだよ!」
「えー、」と言いながら御幸は私を抱きしめたまま話しを続けた。
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年1月16日 20時