[アメコミ] 瓶で殴る。 [短編集] (ページ13)

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願ったり叶ったり。ペンギンページ13

「コブルポット。」

いつからか彼女は僕の事を名前で呼ばなくなった。
理由を尋ねると「親しい仲だと思われたくない」とハッキリ言われた。嫌悪感の滲む表情で。

「幼馴染なのに。」
「私は1度もそんな風に思った事無いわよ。いつも勝手についてくるのは貴方だったじゃない。」
「仲が良い筈では？」
「今度は変な男もついてきてるし。誰よ。」

ニヤニヤと嫌味ったらしい笑みを浮かべるエドワードを指差す彼女。
彼女の言葉一つ一つが僕の心を抉るように突き刺さり、心身共にズタボロである。

「どうして私の家に来るの。犯罪者と一緒に居たくないの。分かるでしょ？」
「ぐ、ぬ…。お願いだよ、なぁ。ちょっとだけで良いんだ。」
「匿えって言いたいの？やめて、共犯者になるつもりは無い。」

ブレずに冷たい態度を取り続けるAと、何故かその様子を楽しそうに見ているエド。
涙まで滲んできた所でようやく根負けした彼女が部屋に入れてくれた。

「良い？今夜だけだから。もう二度と家に来ない約束ね。」
「そんな…」
「コブルポット、アンタが悪いのよ。犯罪者なんかにならなけりゃ今だって…」

そこまで言って彼女は悔しそうに目を伏せた。
言いたい事は分かる、だがこうしないと生きていけなかったんだ。
言葉に詰まりどちらも黙ってしまった所で空気を読まないエドが「コーヒーはどこにある？」なんて尋ねる。
待ってましたと言わんばかりに部屋から飛び出して行くAの背中をただ見つめていた。

「ど、どうしたの。そんなに酷い傷…」

行く所が無く、無理を承知で彼女の家へ向かったら思いのほか簡単に迎え入れてくれた。
前とは全く違う対応に一瞬罠かと疑う。
だが泣きそうな彼女の表情を見ればそんなのは一目瞭然だ。

「何、どうしてこんな、」
「…まだ、まだかすり傷だよ。それより、も、もう来ないと言ったのに…」
「オズワルド。」

震える声で何年ぶりかに名前を呼ばれた。
ボロボロ流れる彼女の涙と鼻をすする音。
しゃくりあげながら彼女が必死に話す。

「ほ、本当は、怖くて、小さい頃と全然違う貴方が怖くて。許して、ごめんなさい。」
「……。」
「好きだよ、大好きだよ。オジー、死なないで。」

ぎゅう、と手を握られ、懐かしいあだ名でも呼ばれた。

「僕もだよ。」

もう後には引けない所まで来てしまったというのに。
これまで真っ当に生きてきた彼女を闇に突き落とす様な事を？

「一緒に来てくれるね？」

そりゃ喜んで突き落とすに決まってる。