恋人*二グマ* ページ14
なんでもない日にプレゼント。
勿論記念日だとか誕生日だとかに貰えるプレゼントだって嬉しい。
が、何でも無い日に貰うプレゼントはもっと嬉しい。
そう同僚が話すのを聞いて思わず「なんで?」と声を漏らしてしまった。
彼女は一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻って「愛されてるって感じがするもの」と答える。
「Aさんは?彼氏とかは居ないんですか?」
「居ませんよ。」
「意外。遊んでそうな見た目なのに。」
キャハハ、と盛り上がる彼女らに合わせて笑うが、笑われる程の見た目なのかと内心ショックを受ける。
あぁねぇそういえば。と話題が変わるのも早くヒソヒソと声を潜め、まるで犯罪事の様に慎重に話し始める。
「クリンゲルさんのアレ、見た?」
「アレって何ですか。」
「やだAさん知らないの?鑑識官の二グマよ。エドワード・二グマ。最近やたらとクリンゲルさんに付き纏ってるの。」
「へぇ。」
「大変よねぇ。私だったら仕事辞めちゃう。だってあの人、音1つたてないで背後に立つのよ。」
「気持ち悪ぅい。ストーカーじゃない。」
知らない所でこんな風に悪口を言われるなんて、二グマさんも可哀想だな。
そう思いながらコーヒーを啜る。彼女らはまだぺちゃくちゃとお喋りに熱中し、私の事はとっくに眼中から外れているようだ。
「先、失礼しますね。」と席を立っても2つ返事だけですぐに悪口に熱中し始める。
いい大人がみっともない。陰口なんて最低じゃない。
当てつけ気味にわざとドアを強く締めた。
「ねぇねぇねぇ聞いた?クリンゲルさんの彼氏。消えちゃったらしいわよ。」
「えぇなぁにそれ。」
「無責任よねぇ。可哀想なクリンゲルさん。」
あ。
いつかの友人と目が合った。
だがすぐに目線は外れ、まるで私なんてそこに居ないかの様に通り過ぎる。
「Aさん。」
その直後に背後から名前を呼ばれ、ヒ、と引きつった声を出してしまう。
振り返れば毎日毎日『偶然』会ってしまう彼が。
「偶然ですね。僕もこっちに用があって。」
「そうですか。」
どうしてあの時一緒になって彼の悪口を言わなかったんだろうと何時も後悔している。
変なプライドなんて捨てれば良かった。
『ありがとう。』
あの日、彼女らと一緒に居た部屋のすぐ前に彼は立っていて、自分の悪口を全て盗み聞きしていたらしい。
部屋から出た私が言葉に詰まっていると、彼は一言笑ってそう言った。
あの時から彼の中の『恋人』は私に変わってしまったらしい。
やさしいひと。*オズワルド*→←願ったり叶ったり。*ペンギン*
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岡P(プロフ) - 初めて読ませて頂きました。どのお話もとても面白く楽しませてもらいました。これからも素敵な作品楽しみにしています。 (2022年3月9日 21時) (レス) id: eaa010ae17 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もゆう | 作成日時:2020年4月30日 21時