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「 スザク？ 」
「 えっ 」
「 なんか、怖い顔してる…。ごめんね、変な話しちゃって 」
Aに声をかけられ、考え事をしていたスザクの意識が現実に戻される。
少し気まずい空気が流れたが、雨が一瞬 弱まった隙を見て、スザクは細い手首を掴んで走り出した。
「 うわぁ！？ ちょっと！ 」
「 ここからなら政庁までそんなに遠くない！ 走るよ！ 」
「 そ、それはいいけど、は、速いってぇ！ 」
Aも運動神経には自信がある方ではあったが、それもスザクと比べると大したことは無い。
何度も足がもつれそうになり、靴が雨水を吸い込んでいくのがわかった。
「 抱えようか？ 」
「 なっ… 」
「 ちょっと興味があったんだ。お姫様抱っこ 」
「 結構ですっ！ 」
政庁に着いた頃にはAの体力は限界で、膝に手を着いて肩で息をしていた。
それを見てスザクは吹き出し、下からギロリと睨みつけられる。
「 もう！ 私がスザクと同じ体力バカだと思わないでよね！ 」
「 あははっ、ごめん。けど似たようなものだろう？ 」
「 女の子に対してそれはないと思います〜 」
ヘッドトレーラーのあるナイトメア格納庫へと向かうスザクの後を追い、Aは呼吸を整えて歩きだした。
途中、曲がり角から誰かが現れ、その先にいたAと軽くぶつかってしまう。
「 すみません、大丈夫ですか？ 」
「 こちらこそすまない。君こそ怪我はないかね？ 」
「 はい 」
「 それは良かった。では私はこれで 」
男は一礼してその場を去っていった。
緋色のシャツに紺色のジャケットを羽織った細身の男は、Aはどこかで見た記憶があった。
「 A、どうしたんだい？ 」
Aが後ろにいないことに気がついたスザクが引き返してきた。
結局 思い出すことは出来ず、「 ううん、なんでもない 」と返して慌てて後を追いかけた。
『 クロヴィスを殺したのは、この私だ！！ 』
Aがその男を見かけたのは、枢木スザク奪還事件にてゼロがクロヴィスの死の真相を話した時。
その衝撃的事実を世間へと知らしめたプロデューサーらしき男だった。
男── ディートハルト・リートは、つい先程 手にした情報のことを思い出しほくそ笑む。
「 この情報さえあれば…ゼロに… 」
黒の騎士団へ入団するためならば、軍事機密をリークすることに一切の躊躇もない。
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作者名：りり | 作成日時：2022年9月27日 12時
