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「 ちょっとレオくん！ 」
ムッと頬を膨らませたAが立ち上がった途端、コツコツと二人分の靴音が聞こえてきた。
「 二人とも、お待たせ 」
「 スザク！ おかえり、どうだった？ 」
明るい表情を見るに、検査の結果は悪いものではなかったのだろう。
Aの問いかけに「 何ともなかったよ 」と答えたが、それに対して驚いた様子を見せたのはセシルだ。
「 スザク君、…いえ、なんでもないわ 」
確かに身体面では健康そのものであったが、精神面では、規律と生命の項目が平均数値を遥かに越えていた。
医者はそれを、無意識のうちに父と自分を比較しているからではないかと話したが…。
「 とりあえず一旦 帰ろうか。セシルさん、ヘッドトレーラーはこの敷地内に？ 」
「 えぇ。入口に回してくるから、そこで待っていてちょうだい 」
セシルの後ろ姿を見送り、スザクは小さく息を吐いた。
医者の言葉が忘れられない。
自分と父を比較していることが原因だって？
ただ、父を殺めた自分への罰が欲しいがために、己の命への執着を忘れてしまっただけだというのに。
「 スザク？ どうしたのボーッとして。早く行こ？ 」
Aに顔を覗き込まれて、慌てて返事をした。
いつの間にかレオは廊下の遥か先でこちらを見つめており、どうやらかなりの時間 思考していたらしい。
「 やっぱり、どこか悪いところでもあったの？ 」
「 ううん、平気だよ 」
「 そう？ 何かあったら言ってね 」
歩き出すAのことを見つめ、重い足取りで後を追いかけた。
シャーリーの葬儀の時にも考えたが、Aを守りたいという気持ちは、父を殺した贖罪が欲しい自分が生み出した、偽りの感情なのだろうか。
戦いが終わるいつの日か、命をかけて彼女を守り抜き、そうしてようやく自らの命に価値を見出すことが出来るとでも？
こんなにも醜く生きる自分を知ったら、Aは幻滅して離れていくかもしれない。
「 僕が君を守りたいという気持ちは… 」
「 スザク〜！！ 置いてっちゃうよ〜！ 」
Aはレオの隣で大きく手を振っている。
「 ごめん、今 行くよ！ 」
まだ迷いはあるし答えは見つかっていない。
Aを守りたい気持ちは本物だと確信を持てる日のために、戦い続けよう。
それに、昨日レオと話したあの想いだけは、本物だから。
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作者名：りり | 作成日時：2022年9月27日 12時
