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ルルーシュはコーヒーに口をつけると、僅かに頬を緩ませた。
「 俺はもう少し濃い方が好みだ 」
「 文句は受け付けません！ 」
「 はいはい 」
冷えていた身体にじんわりとコーヒーが染み渡り、ぽっかりと空いた胸の奥の穴を満たしていく。
Aの純粋な笑顔を見ていると、今だけは黒の騎士団のこと、シャーリーのこと、何もかもを忘れられる気がした。
「 ……元気、出た？ 」
こてんと首を傾げたために、栗色の髪がサラサラと肩から流れていく。
風呂を済ませたからか、微かなシャンプーの香りにルルーシュはピクリと眉を動かした。
一度 気がついてしまうと意識してしまい、花のようないい香りが鼻腔をくすぐる。
「 あぁ。気を使わせてすまないな。ナナリーのことも… 」
「 これくらい何ともないよ。私がやりたくてやったことだし。それに、困った時はお互い様ってね 」
ニコッと笑うAの髪の毛に触れる。
笑顔がピシリと石のように固まったが、気にすることなく触れた髪の毛を耳にかけてやる。
分かってはいたことだが、改めて見ると本当に小さな女だ。
ルルーシュは親指の腹でそのままそっと耳をなぞる。
「 えーっと。ルルーシュさん？ 何かついてた？ 」
「 あぁ。蜘蛛がな 」
「 ふぉぉお！？ 」
「 冗談だ。……フッ 」
大袈裟に肩を震わせておかしな声を上げたAに抑えきれなかった笑いが漏れる。
「 ちょっと！ こっちが心配して
「 悪かったよ、おねーさん 」
「 な、に、よ！ その馬鹿にしたような言い方は〜！！ 」
やはりAをからかうのは飽きないな、とルルーシュは思う。
顔を赤くして怒る姿は可愛らしいし、見ていて飽きない。
「 もう私 寝るもん！ ルルーシュはそのコーヒーを飲み干して、お風呂でゆっくりあったまって、それからふかふかのお布団で寝ること！ いいね！？ 」
「 クク、お前は俺の母親か 」
「 うるさいバカ！ じゃあね、おやすみ！ 」
照れ隠しから捲し立てるように言葉を吐いた後、Aはナナリーの部屋へと逃げていった。
ルルーシュは再びコーヒーに口をつけ、微笑む。
「 ……美味い 」
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作者名：りり | 作成日時：2022年9月27日 12時
