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「 お前にこの世界を変えるのは難しいんじゃないか？ それこそ、超能力か何かない限り 」
心の奥底を探るような視線に気づくことなく、Aは「 そんなことないもん 」と拗ねたような紅茶に口をつける。
表情や仕草、言動などをくまなく観察したが、ルルーシュの前に座っているのはまぎれもなくただの少女であった。
やはり杞憂に過ぎないのだろうか。
「 超能力があったらそりゃ楽だよね〜。『 今すぐ戦いをやめろ！ みんな仲良くしなさい！ 』って言ったらその通りになる力とか！ 」
「 はは、私の言うことは絶対ってところか？ 」
「 そんな感じ！ だけどこれはダメだね 」
「 ……何故だ？ アニメやゲームだと真っ先に重宝される力だろう 」
空になったティーカップをソーサーに置いたAは、それをキッチンへ片付けるために立ち上がる。
こちらに背を向けたため、ルルーシュは厳しい表情を隠すことなく瞳を細めた。
「 それだと自分の力じゃないでしょう？ 意思を捻じ曲げて思い通りにして、そうして得たものなんてたかが知れてる 」
ルルーシュは音を立てずに立ち上がり、同じようにキッチンへ足を運ぶ。
「 はあ、ルルーシュの言う通り私には無理なのかな。いや！ 力を手に入れたからには、きっと 」
Aの言う力とはベディヴィエールのことであったが、それをギアスのことだと勘違いしたルルーシュは懐の銃に触れる。
やはりこいつは、ここで始末しておかなければ。
「 ルルーシュもコーヒー飲み終わったの？ 」
「 ！ 」
軍人だからか気配を察知する能力は優れているようだ。
ルルーシュは小さく咳払いをしてから、ティーカップを洗う小さな背中の隣に歩み寄った。
「 お前がカップを割らないか心配でね 」
「 またバカにした！ もう、私をなんだと思ってるの 」
不満げにこちらを見上げる蜂蜜色の双眸に、絶対遵守の力を使えば全ては丸く収まる。
しかしルルーシュがそうしないのは、彼女のギアスの発現条件が “ ギアスにかけられること ” である可能性が捨てきれないからだ。
「 あ……ルルーシュ、袖 捲ってもらっていいかな 」
「 ん？ あぁ 」
ついでに、とシンクに置いてあったティーポットを洗うAの袖が、肘の下あたりまで下がってきていた。
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作者名：りり | 作成日時：2022年9月27日 12時
