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「 ただいま、お兄様 」
ルルーシュたちが住まわせもらっているというクラブハウスで、Aは驚いて漏れそうになった声を慌てて両手で押さえ込んだ。
「 おかえり。ナナリー、咲世子さん 」
メイドとして雇われている咲世子が押す車椅子には、ナナリーと呼ばれた女の子が座っている。
Aが驚いたのは何も足が不自由だからではない。
足が不自由であることに加え、開くことの無い瞼から彼女が盲目だと知ったからだ。
「 今日は、俺からプレゼントがあるんだ 」
「 まあ。何かしら? 」
ここでAの心臓が緊張からどくりと大きく音を立てる。
彼女にとって七年ぶりのスザクとの出会いは確かに最高のプレゼントだろうが、他人であるAはそうではない。
あまり持ち上げられては場の空気を凍らせることになってしまう。
そんなAの葛藤も知らず、ルルーシュが手招きをする。
どうしようとあたふたしている間にスザクが前に進んでしまい、ナナリーの手を取る。
「 この手……! 良かった、やっぱり無事だったんですね… 」
「 久しぶりだね、ナナリー 」
これは誰が見ても感動の再会だ。
そこに他人が介入する余地などありもしない。
何か手はないかと脳内に様々なパターンを思い浮かべたが、そのどれもはスザクが先にナナリーの手に触れた以上 実行は不可能であった。
「 もう一人いるんだ、ナナリー 」
「 あら、そうなんですか? 」
もういっその事 スザクの友達も連れてきたんだとでも言ってくれれば良いのに、それを伏せての紹介にAは頭を抱える。
もうなるようになれ。
そっと左手に触れると、その上から白い手が重ねられる。
「 女の方……でしょうか。お兄様やスザクさんと同じくらいですね。初めまして、私はナナリーといいます 」
初対面。女性。年齢。
ただ手に触れただけでこれだけの情報を引き出せることから、彼女がどれほどの間 盲目生活を送ってきたかが分かる。
「 初めまして。七瀬 Aといいます。ご、ごめんね。急に知らない人で驚かせたよね 」
「 いえ、お会いできて嬉しいです。スザクさんと同じ日本人の方なんですね 」
日本人の名を聞いても差別するどころか、表情一つ変わらない。
それがどれだけ嬉しいことか。
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りり(プロフ) - 静香さん» ありがとうございます。まだまだ続きますのでよろしくお願いします。 (2022年9月4日 2時) (レス) id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
静香(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (2022年9月4日 1時) (レス) id: 96322907c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2022年8月26日 0時