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「 よろしく 」
握手を交わす二人の隣で、Aはブリタニア人と思われる女性と見つめあっていた。
「 初めまして、わたしは…… 」
握手を求めるように女性が一歩 前に出ると、特派の仲間以外のブリタニア人に怯えたAは大きく身体を震わせてレオの背に隠れてしまう。
ブリタニア人の女性は悲しそうに眉を下げたが、差し出した手を引っ込めることはせず、Aと向き合おうとした。
「 A、大丈夫だよ。ユフィは優しい人だから 」
「 ユフィ……? 」
「 わたしの名前です。ユフィといいます。貴方は? 」
ニコニコとまるで太陽のようにあたたかい笑顔に、Aはゆっくりとレオの背中から顔を出した。
少しづつ近づいて恐る恐る手のひらを取り、「 七瀬 Aといいます 」と、日本人の己の名を名乗る。
しかしユフィは蔑んだ目を向けることも無く、差別するような発言をすることもなく、ただその名を小さく復唱しただけだった。
「 素敵なお名前ですね。A 」
「 え! そんな、私なんて 」
「 いいえ。とても素敵です 」
握られていた手が離れると、ユフィは柔らかい笑顔を携えたままスザクに向き直る。
「 Aもスザクと同じ特派なのですか? 」
「 正式な手続きはこれからの予定だけどね。今日 初めて会ったけど、レオも僕たちの仲間だよ 」
ぺこりと頭を下げるレオの態度は、先程のスザクへの挨拶といい、Aへの対応と比べると礼儀正しい。
この違いはなんだとAは内心 不満を覚える。
「 Aとレオ。お会いできて嬉しいです 」
こてんと少し小首を傾げて微笑む様や立ち振る舞い、言葉遣いはまるでお姫様のようだ。
背筋を伸ばして「 私もですっ 」と声が裏返った返事をしてしまい、Aは両手で顔を覆う。
「 そんなに畏まらないでください。わたしと貴方は、もう友達なのですから 」
「 友達…? 」
「 わたしと友達になっていただけますか? A、レオ 」
レオはユフィを一瞥しただけだったが、Aはそれはもう嬉しそうに頷いた。
しかしAが友達の名前を呼ぼうと口を開いた瞬間、この場にそぐわない大きな爆発音が鳴り響いた。
後方の競技場からだ。
「 チッ、こうなると思ってたけど 」
レオは上空に立ち込める黒煙を眺めて面倒くさそうに頭をかいた。
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りり(プロフ) - 静香さん» ありがとうございます。まだまだ続きますのでよろしくお願いします。 (2022年9月4日 2時) (レス) id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
静香(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (2022年9月4日 1時) (レス) id: 96322907c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2022年8月26日 0時