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すぐそこの自宅に食料の入った紙袋を乱雑に投げ込み、ジンは再びAの手を引いて走り出した。
「 おじさま! どこへ行くんですか?! 」
「 あれが見えるか、A 」
ジンが指さした窓の向こう側には、いくつものブリタニアの軍用ヘリが飛んでいた。なぜブリタニアが攻めてきているんだ。
「 ここは危険だ、今すぐ租界に逃げよう 」
「 けどおじさま! まだゲットーには子供たちが 」
「 いいから行くんだ! 私はお前が、お前だけが無事でいてくれたらそれでいいんだ 」
「 おじさま!! 」
Aの悲痛な叫びも虚しく、ジンは租界へ向かってひたすらに走り出した。
何度も何度も足がもつれそうになったが、Aはぐっと堪えて大きな背中を追い続ける。
空にはヘリコプターだけではなく、見たことの無い大きな船のようなものも浮いていた。
「 きゃあああああ!! 」
「 誰か助けてくれ、頼む! いやだああああ!! 」
ほんの数分前までなんて事ない昼下がりだったのに、気づけばシンジュクゲットーはブリタニア軍によって壊滅状態にあった。
銃を持った兵士はもちろん、戦車や、人型の大きな兵器。
七年前の惨状を思い出し恐怖から血の気が引いていく。
「 A 」
ジンは走りながらこの七年間 実の娘のように育ててきた少女の名前を、落ち着いた声色で呼んだ。
それに返す余裕のないAは、ついに溢れてしまった涙を拭いながら父を見上げた。
「 例え血が繋がっていなかろうと、お前は私の娘だ 」
「 おじさま……? 」
「 私は幸せものだ。ありがとう 」
するとジンが突然 立ち止まった。
肩で息をするAを振り返ると、ジンは幸せそうに笑う。
「 愛してるよ、私の娘 」
凄まじい轟音と共に破壊されたビルの中から、大きな人型の兵器が現れた。全てがスローモーションのように見えた。
ジンは兵器に背を向けたまま、Aの身体をポン、と優しく突き放した。
橋の上から宙へと放り出されたAは、目の前でジンが兵器によって銃撃されるその瞬間を目の当たりにする。
「 いやああああああ!! お父さあああああああん!! 」
手を伸ばしても、もう届かない。
地面に叩きつけられたAは、身体の痛みよりも、何よりも、絶望でいっぱいだった。
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りり(プロフ) - 静香さん» ありがとうございます。まだまだ続きますのでよろしくお願いします。 (2022年9月4日 2時) (レス) id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
静香(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (2022年9月4日 1時) (レス) id: 96322907c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2022年8月26日 0時