▼ 魔神 が 生まれた 日 ページ3
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皇暦2010年8月10日、神聖ブリタニア帝国は日本に宣戦布告した。
極東で中立を謳う島国と、世界唯一の超大国ブリタニア。両者の間には日本の地下資源を巡る、根深い外交上の対立があった。
本土決戦においてブリタニア軍は、人型自在戦闘装甲機
その威力は予想を遥かに超え、日本側の本土防衛線は、ナイトメアによって
日本は帝国の属領となり、自由と、権利と、そして名前を奪われた。
“ エリア 11 ”
その数字が、敗戦国日本の新しい名前だった。
−−−・・・時は過ぎ、皇暦2017年。
一人の少女が荒れた土地を大きな荷物を持って歩いていた。
抱えた紙袋から一つの林檎がコロコロと落ちていき、足取りが少し早まる。
「 A、買い出しご苦労さま 」
「 ジンおじさま。これくらいなんてことないです。また何かあればなんでも言ってくださいね 」
シンジュクゲットーで暮らす少女、Aは差し出されたリンゴを受け取り、ひょいと器用に紙袋に入れてみせた。
彼女の育ての親であるジンは、その華奢な身体に似合わない大量の紙袋を手に取り隣に並ぶ。
終戦から七年、ブリタニアとの戦いに敗れた日本は名前を奪われ、日本人はイレヴンと呼ばれ迫害されている。
ここシンジュクゲットーでの暮らしも快適とは言い難いが、愛を注いでくれる家族同然のジンや、親を亡くした子供たちと過ごす毎日はAにとっては幸せだった。
「 すまないね……。大丈夫だったか? 怪我はないか? 」
「 大丈夫ですよ、買い出しくらい。ブリタニア人か日本人かなんて、判別する術はないんですから 」
ふと、先を歩いていたジンが足を止める。
不思議に思ったAが小首を傾げると、「 何か聞こえないか? 」と空を見上げた。
『 ……する。今ならば……である。ただちに…… 』
遠くから聞こえる声と、そして……銃撃音。
「 急ごう、A 」
先程とは打って変わってジンは険しい表情になり、小さな手を引いて走り出した。
一つ、また一つと林檎が転がり落ちていったが、それには目もくれずただ前だけを見て走り続けた。
七年前の血に塗れた光景を思い出し、Aは目眩を覚える。
もう、大切な人は失いたくない。
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りり(プロフ) - 静香さん» ありがとうございます。まだまだ続きますのでよろしくお願いします。 (2022年9月4日 2時) (レス) id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
静香(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (2022年9月4日 1時) (レス) id: 96322907c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2022年8月26日 0時