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カラカラと点滴スタンドのキャスターが音を立てる。
「 ……手を貸そうか? 」
「 歩いたりする分には特に問題ありません。そんなに気を使わなくて大丈夫ですよ 」
いつ傷口が開くか分からない、と先程から何度も声をかけてくれるスザクにAは優しく笑いかけた。
通された部屋でロイドの正面に座ると、スザクはAの隣に座り、セシルは簡易キッチンでお茶の用意を始めた。
「 じゃあ早速 本題に入るけど、君はあの時、どうしてサザーランドに乗っていたのかな? あの大きな機械のことね 」
眼鏡のレンズ越しのロイドの瞳は、全てを見透かしているような、そんな瞳だった。
恐らく何もかもを知っての上での質問だということにAは肩をすぼめる。
やはり軍の兵器に勝手に搭乗した上に破損させたとなれば、処分されてしまうのだろうか。ましてや自分は日本人だ。
「 あ〜ごめんごめん! 何も責めてるわけじゃないんだよ。ただ教えてほしいだけだからね 」
「 ロイドさんが責めるような言い方するからでしょう 」
コトン、とセシルがテーブルに人数分のカップを置く。
ロイドのカップからはコーヒーの香りがしたが、Aとスザクの前に置かれたカップからはまた違う香りがした。
何より、色が違う。
「 これって… 」
「 緑茶よ。ごめんなさいね、うちには湯呑みがなくて。私こう見えて料理が好きで日本のものもたくさん置いているの 」
頬に手を当てて楽しそうに話すセシルに、ロイドは「 美味しいとは言ってないけどね 」と小言を飛ばして拳骨を喰らっていた。
上司と部下のはずなのに、そこには上下関係など微塵もない。
「 ありがとうございます 」
緑茶を飲んだAは少し落ち着いたのか、ゆっくりと話し始めた。
「 一緒に逃げていた男の子を逃がすために、私は兵士に飛びかかりました。この脇腹はその時に撃たれたんです 」
一歩間違えたら死んでいたと言うのになんて度胸だ、とスザクは小さな少女を見つめる。
「 兵士から銃を奪ってそこは何とかやり過ごしました。撃たれたところが痛くてもう死ぬかと思いましたが…… 」
「 そしたら、無人のサザーランドを見つけたってこと 」
「 はい 」
ロイドはコーヒーに怪しい何かが入っていないか確認してから口をつけると、「 どうして操縦できたの? 」と当然の疑問を投げかけた。
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りり(プロフ) - 静香さん» ありがとうございます。まだまだ続きますのでよろしくお願いします。 (2022年9月4日 2時) (レス) id: adb855f002 (このIDを非表示/違反報告)
静香(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (2022年9月4日 1時) (レス) id: 96322907c4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2022年8月26日 0時