How to cure【実/況/者】 (ページ4)

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rt_喘息_#02 ページ4

彼女の背中を擦りながら電話しているので
向こう側にも咳の音は聞こえているのだが
それを聞いてほぼ確定だろう。との判断。

初めてで薬も持っていないことを説明すると
すぐに緊急外来の病院へ行った方がいい。と
場所を教えてもらってから相談の電話を切って
その流れでタクシーを手配。

「A。乗りな。」

俺から10センチほど低い彼女をおぶってタクシーまで移動。
このときばかりは
少しだけでもジムに通っていて良かったと感じた。

タクシーに乗っているものの十数分の間
咳を殆どしなかったな。なんて考えていたら
降りてすぐに我慢していた分なのか
咳が止まらなくなり見事なまでに膝から崩れ落ちた。

「A！」

病院の目の前に降ろしてもらっていたので
病院の人が何故かすぐに来て
あっという間に彼女はストレッチャーに乗せられた。

聞いたことのない数値が飛び交っている。
でもよろしくない数値なのはなんとなく分かる。

治療室に運ばれていった彼女。
彼女の情報を聞きに来た看護師さんに説明した後は
ガランとした待合室でしばらく待った。

「――さん。どうぞ。」

俺の名字が呼ばれ診察室へと向かった。

聞かされたのは背筋が凍るような話。
もう少しでも相談が遅かったら
今よりももっと酷い状況になっていたのだという。

その後
薄いピンク色のカーテンで区切られたスペースへと
案内された。

彼女は今、気管支を広げる薬を点滴しているらしく
薬も処方してなんならここまで持ってくるので
点滴が終われば帰ってもらって大丈夫とのこと。

今日の日中にでも病院へ行って
しっかりと検査を受けて治療していけば
コントロール出来るようにもなる。と優しく説明された。

点滴がもう少しで終わる頃に彼女が目を冷ました。

「――。」

「どしたA？」

「…ごめんね。疲れてるのに。」
　
「大丈夫。Aの方が何倍も苦しかったでしょ。

日中に病院行ってちゃんと診察受けような。
治療。俺も協力するから。」

「うん、ありがと。」

点滴が一滴落ちていく。

神様でも仏様でも良い。
どうか彼女が健康で笑っていられるように。
そんな俺自身以外の願い事をするのは
彼女が初めてではないのだろうか。