夜明け前 �� ページ3
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カチッ、と音が鳴って、
気づけば時計の長針は二十分をまわっていた。
地平線よりは上にいるといっても、まもなくカーテンの向こうから陽が差すだろう。
おはよう、を共有してまだ六か月。
ただいま、を共有してまだ三か月。
おやすみ、を共有してまだ一か月。
とっても胸が高鳴るはずなのに、とっても安心する。
しあわせ、って安心感が続くことをいうのかな。
でも、電話がかかってきた瞬間も、二人でいただきますを言う瞬間も、彼に贈るプレゼントを選んでいる瞬間も。
どんな瞬間もしあわせだったと、言い切れる。
何も分からないこれからも、しあわせがあふれている筈だって言い切れる。
＿＿＿夜明けを恐れる日が来ないように。
＿＿＿＿＿泣いて夜明けを待たぬように。
「…ぅん？……あ、さ？」
私が目を開けていたせいか、起こしてしまったみたい。
「ううん、まだ、夜明け前だよ。」
眠っていていいよ、の意味で布団を掛けなおす。
素直に、もう一度目を瞑った様子を見届けて、私はわずかに近づいて。
日常、になっていく瞬間を。
当たり前、を築く瞬間を目の当たりにしている気分で心地いい。
砂原君、私、決めたんだ。
あなたの居場所を照らすような、物語を書くって。
事実と、ほんの少しのフィクションと、何よりたくさんの敬意と感謝を込めて。
うまく書けるか分からないけれど、ね。
夜は明けるから、美しい。
夜明け前に、きっと読みたくなるような。
「ミッド、ナイト、ブルー。」＿＿＿...
素敵な、タイトルでしょう？
なんて。
微睡む彼にそっと、そうっと近づいて、微笑んだ、
いつかいつの日かの夜明け前。
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作者名：祈島世字 | 作成日時：2023年9月14日 17時
