夜明け前 �� ページ2
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砂原君、わたしね、電話じゃ話しきれないくらいたくさん聞いてほしいことあるんだよ。
ごく偶のビデオ通話がもどかしくて、何度も画面の録画を見返していたんだよ。
香りの似てる香水や柔軟剤を探し回った挙句、翼と小塚くんにサシェを作ってもらったなんて話は口が裂けても言えないんだけど、ね。
毎日、同じ時間に同じ月を見て、朝日を迎えられることが心から嬉しくて、こんなに早く目が覚めちゃうんだよ。
「……まってたんだよ、ずっと」
ずっと、ずっと、ずうっと。
何度、七夕を待ったか、数えたくもない。
『一緒に暮らそうよ』
やっと言えてよかった。
言葉にできて、同じ場所の空気を吸って声に出せてよかった。
四時二十分を待つ空はだんだんと周囲の輪郭を型とっていく。
仰向けで眠る彼はすやすや寝息を立てていて、それがまた私の口角を持ち上げる。
砂原君、寝相いいんだね。
若武なんかみんなでお泊りした時、いびきはかくし、服はどこかにいっていたらしいし、上杉君ですら寝癖がついて耳のようになっていたのに。
忍は寝ぼけてドアに頭ぶつけて自室じゃないから、なんて言い訳をしていったっけ、くすくす。
二人同じ部屋で寝ていると話した時のみんなは、お兄ちゃんというより大勢のお父さんのようだった。
実際のパパは私の寝相を心配していただけで何も言わなかったのに。
ちなみにお兄ちゃんは何故か急に二人分の新しい枕を送ってくれた。
…それにしても、一緒に生活する報告だけでも半べそかいていたし、まったく、お父さんたちはいつになったら子離れするんだろう。
これじゃ、いつかその日が来たら全員でエスコートしてもらわないといけないかも。
なんて、想像して、頬があつくなる。
みんなの言う通り、ロマンチストなのかも。
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作者名：祈島世字 | 作成日時：2023年9月14日 17時
