十個目の火の玉 ページ10
「鯉登少尉がいなくなったぞ。」
「え?」
確かにいない。
さっきまで一緒に行動していたはずなのに。
「ここは、フレップワイン?」
少し歩き回ると建物を見つけた。
月島さんが戸を引いて中に入ると鯉登さんがグラスを片手におばあさんと喋っていた。
聞き込みには見えないな。
「鯉登少尉殿、ひとりでうろちょろしないでください。」
「甘酸っぱくてなかなか美味いぞ。飲んでみろ月島軍曹。」
楽しそうに月島さんに話しかける鯉登さんを見て杉元さんがボソリと怒りを顕にする。
殴り合いの乱闘になりそうなのを必死に止める。
「ぼうやも初めて見るアイヌの子だね。どこから来たの?
おばあさんの目線には鯉登さんの荷物に隠れていたアイヌの子供がいた。
おばあさんの話によるといつも魚を売りに来るアイヌのおじいさんがアイヌの女の子を連れていたらしい。
杉元さんがアシㇼパさんの写真を見せるとおばあさんはそうだと言った。(最初に見せた谷垣さんの写真は見なかったことにした。)
「やっぱり来てた!アシㇼパさんは、この樺太に来てたんだ!」
お店から飛び出して行った杉元さんを追う。
森の中に入ると見慣れない顔が立っていた。
「あれがロシア人だ。」
私の表情をみて感じ取ったのか隣で谷垣さんが教えてくれる。
「
月島さんは流暢に外人と話をする。
異国の言葉を話せるのはすごい。普通に感心する。
すると月島さんが血相を変えて走れと叫んだ。
どうやら先程のロシア人がアイヌの女の子を見たらしい。
「少女がひとりであの森に入っていくので止めようとしたが見失ったそうだ。
それにこのあたりの森はヒグマよりももっと凶暴な動物がいると言っていた!」
ヒグマよりも凶暴な動物。
確かヒグマってクマの中ではかなり上位に位置する凶暴さを持っていなかったか?
それをも超える動物か。
「アシㇼパさん!」
「子供の足跡がある!こっちだ!」
谷垣さんが見つけた足跡を辿っていくと杉元さんが見つけたようだ。
あちらも私たちに気づいて振り向く。
が、写真の少女ではなかった。
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作者名:きょーりん | 作成日時:2019年3月23日 21時