九つ目の灯火 ページ9
なるべく破片が飛ばないようにしたんだが大丈夫だっただろうか。
拳の先の方に熱を集中させて溶かして割る。
それだけなので大して力も使っていない。
音を立てて割れたプレートにみんな釘付けだった。
「ほ、ほんとに割ったのか……?」
「なんて事だ……。」
私は振り返り杉元さんと向き合う。
「どうだ、私の力を知ってもらえただろうか。」
「おお……予想以上っていうか、予想も出来なかったんだが。」
確かに私の見た目は少女だから仕方ないところもある。
なにはともあれ連れていかせてくれるらしいのでホッと息をつく。
.
そこからは早かった。
数日も経たないうちに杉元さんは怪我を治しすぐに出発することになった。
黒い船に乗り込むが、どうもベリアルの黒船にそっくりで少し身構えた。
今から向かう樺太とはここよりも寒く、半分が日本、半分が異国なんだそうだ。
生憎私は日本の妖なので日本語以外はわからない。
海をぐんぐん進む黒い鉄の船から海を眺めていた。
すると後ろから声をかけられた。
振り返ると鯉登さんの隣にいた軍人だった。
「君のことを知っておいた方がいいと思ってな。」
「はあ、…そんなに喋ることも無いがな。」
どうやらみんながみんな疑心暗鬼というか、探りあっているというか、情報を得ようとする。
私の情報など役に立たないと思うのだが。
「私は古火A。鶴見さんの知り合いの、」
「ああ、いい。その辺は鶴見中尉に聞いている。」
「じゃあ私が妖であることも?」
コクンと頷いた男はある程度(というか私が鶴見さんに伝えたこと全てを鶴見さんから)聞いていたらしい。
「俺は月島だ。」
「月島さん、ほかの方は……」
「知らんだろう。まあいつ話してもいいだろうし、話さなくても。」
「話さないのは面倒くさい。それにあの時少し力を使ったしな。聞かれたら答える。」
そうかと素っ気なく返した月島さんはもうすぐ着くから準備をしとけよ、と言って行ってしまった。
……もしかしてそれを伝えるのが目的だったんじゃ。
港に着き、船を降りる。
まだここは日本の領地らしく見た目も変わっていない。
彼らの目的はアシㇼパさんを取り戻すこと。
アシㇼパさんを連れ去った者がこの樺太に向かったらしい。
私達はアシㇼパさんの情報を得るためにまずは聞き込みを始めた。
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作者名:きょーりん | 作成日時:2019年3月23日 21時