三十二個目の火光 ページ32
幕のそでで待機していると初めに出ていった山田さんの声が響き渡る。
それにつられて観客の声もわあっとあがった。
まずは長吉くんと鯉登さんの軽業だ。
二人とも言わずもがな、見事な軽業を披露した。
(鯉登さんは女性の心も掴んだみたいだ。)
少女団も舞台に立ち、私の出番が近づいてくる。
初めにやるのは怨霊事だ。そのあと私の手品(と言えと言われた)を続けて少しだけ披露する。
そうすれば私の出番は終わりだ。
バチンっと照明が暗くなり、先程までの明るさはどこかに消えた。
定位置に着くと薄暗くなるように照明がつけられた。
｢身共に残っているのはそのほうへの恨みだけ。｣
｢この恨みどうしてくれようか。｣
.
｢�犹爐覆仆�共�瓠�｣
そこまで言うと今度は軽業だ。
狂ったように取り憑かれたように笑いながら宙返り。
トントンと積み上がった箱や玉に登ったり。
｢地獄とは、身共とそのほうの楽園！！！｣
手を上に翳した後胸の前で拳を握る。
ベチャッ……
｢フフフ……！！！｣
握れば赤紫の塗料が入った袋を破裂する。顔にかかる塗料を滴らせ笑いながら一言。
｢そのほうの後悔を聞かせてたもれ。｣
先生曰く、少女らしく、あどけなく笑うことでより一層怖く感じるらしい。
｢アハハッ……アハハハハ！！！｣
高らかに笑うと私の足元に紫色の火が灯る。
もちろん魂だ。
どんどん燃え盛る炎。
私を包んでいく。
観客からどよめきの声も聞こえてくる。
あれ？やりすぎ？
｢地獄へ行きましょうか。｣
完全に炎が私を包んだところで私も魂に姿を変える。
そうすれば消えたように見えるだろう。
後半は先生にも伝えていなかったので少し申し訳ないと思っている。
おもってはいるが、後悔はしていない。
そでに隠れて元の姿に戻ると大きな歓声が聞こえた。
そっと心の中でガッツポーズをする。
｢素晴らしかったわ！よくあんなこと出来たわね！｣
｢本当か！？いや先生のおかげだ。｣
次はまた鯉登さんか。
あの難しそうな綱渡り。
まあきっと鯉登さんなら余裕綽々でこなしていくのだろう。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
