三十個目の火光 ページ30
私がやるのは��
女方の芸らしく私がやるのも違和感はないそうだ。
それに少し私に合っている気がするしな。
怪我をしてしまった彼女に演目の細かい内容を聞きながら指導をしてもらう。
｢死霊や生霊の恨みを軽業で表現するのよ。ちょっと難しいかもしれないけど、貴方、軽業は出来るみたいだから問題は演技ね。｣
｢演技か、。確かに得意ではないな。｣
厳しく、的確な助言に私も練習に身が入る。
しかしどこかぎこちなく、違和感が残る、と彼女は言った。
｢うーん、本番までそんなに時間がある訳じゃないけど……少し休んでみたらどうかしら？｣
｢い、いいのか？休んでも。｣
｢演技にぎこちなさがあるのはその役になりきれてないからよ。一度その役について考えてみるといいかもしれないわ。｣
なるほど、と納得する。
私は演技などはやったこともなかったので、今は彼女の言葉が絶対だ。
彼女の言うことは全て実行した方がいい。
私はテントから出て外の空気を吸うことにした。
｢考える…つまり恨みを募らせた死霊ならどうするか、を考えるということか。｣
どうするのだろうか。
私はそんな存在だが、イマイチピンと来ない。
ならば悪霊は、どうだろうか。
いやアイツらにそんな風な感情はあるのか？
うーん……、
｢があああ！！！ダメだ！よくわからん！！｣
参ったな…こんなんじゃ公演にはとてもじゃないが出られない。
軽業だからと引き受けたがこんなに過酷だったとは……。
｢おい何してる。｣
｢あ！月島さん。｣
頭を抱えてうずくまっていると頭上から声が降ってきた。
｢少女団だったか？練習はいいのか？｣
｢…谷垣が、……今休憩だ。｣
少し遠い目をした月島さんはそれよりと話を変える。
｢なにをしていると聞いたんだが。お前は特に練習もいらないだろう。｣
｢あー、実はな私も別に出ることになってな。上手くいかなくて…。｣
アハハと頭をかくと月島さんはため息をついた。
｢特に聞かないが、目的を忘れるなよ。杉元が、怒りそうだしな。｣
｢大丈夫だ。鯉登さんほど上手くはないからな。｣
それは安心だな、とまったく気持ちのこもってない言葉を贈られる。
｢月島軍曹ー！｣
｢…練習再開のようだ。じゃあな。｣
｢ああ。｣
あ、杉元さんなら何かわかるかな。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
