十八個目の火の玉 ページ18
ゾッとした。
心臓を鷲掴みされたような冷たい恐怖。
……なんだったんだ、？
｢ど、どういうことだ…！？｣
｢？…どうかしたのか？｣
隣で目をカッ開いていた鯉登少尉は、信じられないものを見たような表情をしていた。
｢おい月島ッ、あの小娘、何者だ！？｣
｢彼女は、｣
｢お前は見たのか！？小娘の拳を！！｣
月島軍曹の言葉を遮りAちゃんを指さす鯉登少尉。
拳？……速すぎてよく見えなかったな。
｢拳、ですか？｣
｢そうだ！！あの拳は火を纏っていたぞ！！？｣
｢それはどういう｣
｢物足りないなスチェンカ。｣
言い争う二人の後ろから聞こえた声。
言わずもがなAちゃんだった。
俺に預けていた上着をサッと着てニコリと笑った。
.
俺は俺達のスチェンカを見ていた日本人と話をした後、谷垣達のところへ戻ったのだか、何やら大きな声が聞こえてきた。
｢キェェエエ！！鶴見中尉殿を脅かす物ん怪め！！今すぐたたっ切ってやっ！！！｣
｢落ち着いて下さい鯉登少尉！！｣
ドタバタと暴れる鯉登少尉を押さえる月島軍曹。
彼はいつでも苦労してるなぁ。
｢谷垣どうしたんだこれ。｣
｢鯉登少尉がAは物の怪だと…鶴見中尉を唆した化け物だと、怒り始めてな。｣
当の本人はポカンとしていて小さく口を開けていた。
まあ鉄のプレート真っ二つにするから普通の子ではないとは思っていたけど、お化けだって言いたいわけだろ…？
それは言い過ぎなんじゃないのかな？
｢離せ、月島！！！｣
｢出来ません鯉登少尉。｣
｢拳に炎を纏わせて人間じゃち言い張っつもりか！？｣
｢！…あれが見えたのか？｣
ピクっと眉を上げたAちゃんはそうか、と呟いて考え込んでしまった。
｢おい古火！もういいんじゃないか？｣
｢む、月島さんはそう思うか？私もそう思っていたところなんだ。｣
…月島軍曹は何か知っているのか？
｢鯉登さん、全て話そう。だから一旦切りかかるのはやめてもらえないか？｣
｢ぐっ、……まあ、いい。｣
鯉登少尉としても話を聞き出せるのは好都合だと思ったんだろうな。
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
