二十八本目の火柱 ページ28
色々紹介してもらい、杉元さんはハラキリショー、月島さんと谷垣さんは少女団、鯉登さんはなんでも出来るので軽業全般、と出る演目が決まったところで、山田さんが私のほうを向いた。
｢あなたも…少女団にしますか？｣
｢あ、いや、私も少し手品が出来る。それをしようと思ってたんだが……。｣
そう言うと山田さんは興味津々に詰め寄ってきた。
｢どんなものですか！？見せて欲しいぃ…。｣
｢ああわかった。｣
そっと手のひらを上に向けて、火の玉を出す。
ゆらゆらと揺れている。
ちらっと山田さんを見やると目を丸くして魚のように口をパクパクさせていた。
脂汗を滲ませて火の玉を指さした山田さん。
｢……この手品にはタネも仕掛けもない。｣
｢そそそ、そんな！！そんなことって！｣
山田さんは私の手を取ってぎゅぅぅぅと力強く握ってきた。
｢あなたのその技術！不思議すぎる手品！そして鯉登音之進くん同様見た目もいい！！こんな才能が転がっていたなんて！！！｣
ぜひうちに来てくれと熱弁されたがやんわり断っておいた。
まあ、本物の妖と知れば曲馬団ではなく見世物小屋に行き着きそうだが。
｢とりあえず、怪奇とか、その辺の言葉を使って宣伝して欲しい。｣
｢ぅぅ、わかりました。……惜しいなぁ。｣
了解してくれた山田さんは杉元さんの講師としてそちらに向かった。
さて、どうしようか。
私は練習なるものはいらないし、失敗もない。
みんなのを見学するのも良いが邪魔になってはなあ。
……高いところは得意と言うわけではないのだがあの軽業、ちょっと興味あるな。
ふむ、よし、鯉登さんの所へ行こう。
彼ははっきり言って練習しても数分で終わるだろうからな。
なら邪魔にもならない、はず。
.
｢長吉くん。｣
｢あ、どうも、。｣
｢どう？鯉登さんは。｣
｢あの方は、僕が思った通りです。素晴らしい。｣
なるほどな、と相槌をしてから鯉登さんを目で追う。
人の肩に乗せられた一本の棒に垂直になりバランスをとる�牋賈榁歉緇莊櫚瓩鬚笋辰討い拭�
相も変わらずすごいな。
｢観客に向かってキスを投げてください。｣
｢キスを投げるとは？｣
｢『投げ接吻』です。海外では受けるんですよ。｣
とまあ、一度鯉登さんが投げ接吻をすれば見ていた女性が黄色い声を上げた。
流石、華がある。
…でもこれじゃ杉元さんより目立たないか？
杉元さんの名前を轟かせるためにやるんだよな？
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作者名：きょーりん | 作成日時：2019年3月23日 21時
