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「キスしていい?」
「え、やだ…」
「は?」
「うぎっ…いひゃいひゃいひゃい!」
キスを拒むと、握る力をさらに強くされる。
頬肉が歯に抑えつけられる感覚が痛くて悲鳴をあげた。
「なんでさせてくれないの」
「だって……キスは、もっと大切にしてほしいっていうか……」
「………おまっ、そんなロマンチストなの?」
「い、いいじゃん!恥ずかしいこと言わさないでよ!てか、こうなったのは翠のせいっ…」
「俺?」
若干怒っている翠に、昔の記憶が蘇る。
よくそんな小さいこと覚えてるな、と言われそうだから言わなかったが、ここまで言ったのなら言ってしまおう、と恥ずかしげに口を開いた。
「…私たちがまだ小学生の時、流れでキスしようとした時あったじゃん」
「………は!?し、知らねぇ、そんなの!そんなことあった!?」
私は、ハッキリと覚えている。
翠は覚えていないのか。驚きで立ち上がる翠に、こくり、と頷いた。
「翠が、私がキスしようとしたら、『キスはもっと大事にしなきゃ』って、拒んできた…」
「は、はぁ…!?」
「だから私、今日ここまで律儀に守って…」
「き、記憶違いじゃねーの」
「……ほんとだよ」
キスをしようとする仲なんて、翠しかいない。
翠は恥ずかしい記憶に顔を赤くするどころか、逆に青くしていた。
小学生の男女というのは困る。
翠は恐らく、母親やらに教えられた覚えたての知恵で私のキスを拒んだのだろう。
好意とかそういうのはどうでもよくて、決まりを守るのが正しい時期だから、こればかりは仕方なかったことだと思う。
「なんだよ、それ…」
自分の所為だと気づき呆れ返る翠。
律儀な私がおかしいのか、私の顔を見てふっと笑うも、今度は体を退け反らせて項垂れた。感情がごちゃごちゃになっているようだ。
「じゃあ大切な時っていつなの」
「それは…わかんないかも」
「……………」
「あいひゃいいひゃいいひゃいごへんっへ」
いい加減にしろ、と言いたげに頬を無言で両側に摘んで引っ張られた。ごめん、という謝罪の言葉も上手く言えず。
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5674C(プロフ) - たまたまきんきんさん» 嬉しいお言葉恐縮です!ありがとうございます!! (2022年5月23日 12時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
たまたまきんきん(プロフ) - やばい、まだ全部読んでないけどやばい、何このときめき、やっば。狂いそう。 (2022年5月18日 14時) (レス) @page27 id: 4c9c318806 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - 彩さん» 意識しました!!!!読んでいただきありがとうございます! (2022年3月21日 0時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
彩 - なんだかめっちゃ青春!!! (2022年3月20日 16時) (レス) @page48 id: be844da8b2 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - ちゅーしちゃうぞ♡さん» ありがとうございます!!最後まで楽しんでいただけて、とっても幸いです!!^ ^* (2022年1月17日 6時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:5674C | 作成日時:2021年12月27日 14時