9【一人称視点】 ページ18
部活が珍しく無い放課後。
高鳴る鼓動を抑えられないのを、スキップで表現した。
この気持ちはそう、『とあるところ』…『高峯八百屋』に行くためのものだ。
「!」
名前と同じ緑色のエプロンを着ている彼。見慣れた背中を見つけた私は、飛びつくように大声で名前を叫んで駆け寄った。
「高峯ーっ!」
私に気づいた高峯が、こちらを見ようと体を捻らせた。
顔を見れば、さらにドキドキする。
振り返る途中で、私は勢いをつけて高峯に飛びついた。
「どーーーんっ!」
「うわ、ちょっ……!」
腰に腕を巻き付き、高峯の温もりを直で感じ取る。
じわりと染みつく体温を心ゆくまで感じようと、目を閉じて、淡い息を吐いた。
「ちょ、ちょっと、A…」
「ふふんっ、ごめんごめん!」
私の登場に困っている高峯。
本当は悪いと思ってないが、とりあえず謝っとこう精神で謝り、身を離す。
私に向き直った後、高峯は私のことをじっと見つめてきた。
「……?高峯?どしたの?」
「………いや、別に…」
「んもうっ、ごめんって。もう飛びついたりしないからさ」
「……別に、飛びつく飛びつかないは…どっちでもい、いぃ…」
「え…そう?そうなの?なら今後もこうやって挨拶しよっかな〜なんて!」
「……………」
高峯は再び、私を見つめて、視線を逸らさない。
私は人見知りのせいで高峯の鋭い眼差しをじっと見つめ返すことができない。が、どことなく、高峯は私の姿をみて安心しているようにも見えて、緊張よりも疑念が湧いた。
高峯は普段よりも肩がしゃっきりとしていて、口角が上がっている。
「…なんかいい事あったの?」
「ないよ。むしろ嫌なことばっかり」
「え、そうなの。どんなこと?私で良ければ聞くっ!」
「…………うん、まあ、クリスマスにやる夢ノ咲のイベントの宣伝みたいな催しがあって、俺が所属してるユニットが、それの主催することになっちゃってさ…」
「へぇー、前夜祭的な?そんなんするんだねぇ…大変なのに頑張っててえらいね〜高峯!
いい子いい子してあげる!頭を下げーいっ!」
するわけないでしょ、と、跳ね除けられる覚悟で冗談を言い、手の平を頭の上に出して掲げた。
応じるわけがないと思ってても、照れる高峯が面白くてついからかっちゃうんだよね〜…。
昔から私は、思ったことをなんでも口に出してみないと済まない性分だ。高峯だって、それを知ってる。
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5674C(プロフ) - たまたまきんきんさん» 嬉しいお言葉恐縮です!ありがとうございます!! (2022年5月23日 12時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
たまたまきんきん(プロフ) - やばい、まだ全部読んでないけどやばい、何このときめき、やっば。狂いそう。 (2022年5月18日 14時) (レス) @page27 id: 4c9c318806 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - 彩さん» 意識しました!!!!読んでいただきありがとうございます! (2022年3月21日 0時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
彩 - なんだかめっちゃ青春!!! (2022年3月20日 16時) (レス) @page48 id: be844da8b2 (このIDを非表示/違反報告)
5674C(プロフ) - ちゅーしちゃうぞ♡さん» ありがとうございます!!最後まで楽しんでいただけて、とっても幸いです!!^ ^* (2022年1月17日 6時) (レス) id: e6d0696709 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:5674C | 作成日時:2021年12月27日 14時