０３: 風になりたいらしい。 ページ3
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｢じゃあ琴、ちゃんと書き直してこいよ。｣
｢あいよぉ〜、オカザキ先生、さよなら〜。｣
｢あ｣
放課後、いざ部活に行こうと職員室の前を通れば、ちょうど先輩が中から出てきた。
思わず声を上げれば｢あかぁーしクンだ〜｣と、昼の時と同じように俺に近づいて来る。
先輩の手には一枚の紙が握られていた。
｢ねえねえ、あかぁーしクン、何か面白い話、しておくれよー。｣
｢すごい無茶ぶりですね、俺、今から部活なんで。｣
俺がそう断れば、先輩はふぅーん、と足をプラプラさせた。
が、先輩はすぐに顔を上げる。
｢部活、何やってるの？気になるのね。｣
｢バレーです、バレーボール。｣
｢バレー？アッ、知ってる！ピョーンって高く飛ぶヤツ！あかぁーしクンも飛ぶの？｣
軽くスパイクの真似をして跳ねる先輩に、少し笑みが漏れる。
｢いや、俺は飛ばないっす。セッターなんで。｣
｢セッター？｣
｢逆に先輩は何してたんですか？｣
先輩はセッターと言う言葉に頭を傾げる。
バレーのポジションの事は、流石に分からないか、と思った俺は話題を変える。
すると、先輩は持っていた紙をヒラヒラと揺らした。
｢うんとね、シンロキボウショ？に将来の夢書いたら、オカザキ先生に怒られたの。｣
｢……そこに何て書いたんですか。｣
｢『風になりたい！』って書いたのね。｣
答えを聞いた瞬間、思わず冷や汗が流れる。
｢風になりたい｣……は、すごいな。
と、逆に関心してしまった俺は、いきなり進路希望書の紙を折り始めた先輩を暫く見ていた。
……ん？
｢ちょ、何やってるんですか！｣
｢じゃーん、紙飛行機ー！｣
無理やり止めることも出来ず、大事な紙はあっという間に先輩のオモチャへと化してしまっていた。
特に気に止めることも無く、先輩は真っ直ぐな廊下に、紙飛行機を飛ばした。
｢いいんですか。大事なモノですよ。｣
｢……将来の事は、わかんないモン。皆言ってた、皆おんなしなのね。｣
先輩は落ちた紙飛行機を拾って、また飛ばした。
紙飛行機はしばらく飛ぶけど、すぐに床に落ちてしまう。
一応先輩も３年生だから、進路には悩んでいるのか。
紙飛行機を見つめる先輩は、少し元気が無かった。
｢……せんぱ、｣
｢あかぁあーーし！！！｣
突然、俺の声を遮った大きな声。
聞いたことのある、この声の主は、
｢……木兎さん。｣
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作者名：高原 | 作成日時：2018年2月17日 12時
