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「自分の才能を嫌わないで。私はその才能に救われた。私だけじゃない。他にも沢山、Aの才能に救われた人がいる。だから…」
じゃあ、なんで。
なんでお兄ちゃんたちを救えなかったの。
一番護りたかった人たちなのに。
「あれはAのせいじゃない。誰にも予測なんてできなかった」
こんな才能より未来を予測できる才能が欲しかったよ。
「ねぇ、お願い…こっちへ来て」
1歩踏み出せば全部終わる。
これから起こる不幸も、全部。
「終わらない。ここから飛び降りたらまた新しい不幸を生むだけ」
少なくともあの大人たちからの不幸は止まる。
「お兄ちゃんたちはこれを望んだ?望んでないよ。Aには生きてほしいって…そう願ってる」
死人に口無し。
それは全部、友理、貴方の妄想。
見上げれば綺麗な青空。
見下げれば沢山の人達。
一歩踏み出せばすべて終わる。
30m程ある高さのビルの屋上。
自ら命を絶った者は永遠とこの世を彷徨い続ける。
そんな事を何処かで聞いたことがある。
本当なのだろうか。
死を目の前にした時、人は生にしがみつく。
そんな事を誰かが言っていた。
それはまだこの世に希望がある人たちだけなのでは?
絶望した人はきっとしがみつかない。
それどころか自ら手放すだろうね。
私は…。
「待って…!!」
手放すかな。
一歩踏み出した瞬間、目の前が暗くなった。
「A」
声がした。
聞き慣れた声。
落ち着く声。
誰?
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作者名:ねこ | 作成日時:2018年4月1日 20時