そんな理由 ページ24
無月はニヤリと笑うと云う。
「だって
治は驚かない。「やっぱり…」と呟いた。
「私の本名は
「無月って名前は偽名だよ、偽名。因みに名前の意味はツキが無いって意味ね。ついてないのさ。折角、自 殺が成功したって云うのに、こんな世界にまた住まされるなんて最悪だよ」そう無月は空を見たまま云った。
「他に君が聞きたいことと云えば何故君と織田作を拾ったのか、って所かな。元々ね、拾う心算なんて無かったのだよ。一人で静かに細々と暮らして早死するだけだと思っていたのに…散歩の途中死にかけた君に会っちゃってねぇ。並行世界の自分があんなにも『生きたい』って目をしてたんだ。心底、見損なったよ」
声色は全然見損なったと思っていない声色だった。治は何も云わない。静かに無月の云う事を聞いていた。
「あんな目をした子を見放せないのが私の良心だ。仕方なく拾った。でも、案外私ってやれば出来るのだね。君を見ていて思ったよ。からっきし出来ない料理も案外やろうと思えばできるし、生活力だって意外にあった」
「それでも一度もやろうとは思わなかったけれどね」無月は足を子供のようにブラブラとさせながら云った。
「織田作を拾ったのは…殺したく無かったのさ。あのまま行けば、きっと織田作は森さんに勧誘されてマフィアに入ってた。それは駄目だ。死んでしまう」
「無月さんの並行世界では織田作はマフィアに居て死んでしまったの？」
無月は「そうだよ」と悲しそうな声音で云った。
「並行世界では織田作は私の一番の理解者だった。きっと私よりも私自身の事を知っていたのだろうね。死ぬ前に、私に道を示してくれたよ。だからこそ、友を死なせたく無かった。それにきっと君達も私達のように仲良くなれると思ったんだ」
「一人で居ると人間は壊れて仕舞うからね」無月はそういうと立ち上がった。尻についた砂を払い、振り返る。
「もう時間だ」
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