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5-突然の雨- ページ5

それから、

そんな挨拶をするのは少しずつ日常になってきた。

でもね。

気がついたの。

章大くんは全員に…必ず朝の挨拶をしていること。

私にだけとかではなくて、全員に。

なので、きっと、章大くんにとって

特別なことは何もなくて、普通のこと。


片想いって苦しい。


だから、そんな想いは曲に乗せて…。

適当に弾きながら、鼻歌のように。

そうやって自分の想いを発散することは、

今までになかった変化。

なんとなく、自分が変われそう。

そう思ったけれど、

やっぱりすぐには変われるはずもなくて、

変わらぬ自分のまま過ごして居ると、

季節は雨を連れてきた。


『…また今日も雨…』


登校時に呟く言葉。

傘が雨と私を遮るから、

私の言葉はここに留まったまま。

もわっとした空気に湿度が加わって

息をするのも苦しくなる。

梅雨の雨のせいなのか、

変わらずに輪の中心にいる章大くんを遠くから眺めているせいなのか。

どっちで苦しいのか私にはもうわからなくなって、

なんだか泣きたくなってくる。


それでも晴れる日もあって、

梅雨の晴れ間で良い天気だというのに、

そんな日に限って、日直だし、

相手の人は部活だと言って早々にいなくなるし。

担任にいろいろとすることを言われて、

ひとり教室に残っていた。

明るかった空が段々とどんよりして来たと思ったら、

ぽつりぽつりと雨をもたらす。


『…今日は晴れだと思ったのに…』


すぐに強くなって来た雨足。

もうすぐ終わる担任からの依頼と日誌の記入。

誰もいない教室で、無意識に歌う鼻歌。

雨音に消されるようで、

今は逆になんだか心地いい。


『よし。終わり』


全部を終えて、職員室に立ち寄って、玄関に向かう。

正面に見えて来たガラス扉の先の雨はまだ降り続いていて、

この間持ち帰り忘れた傘と、

鞄に折り畳み傘があって良かったと安堵する。

それにしてもこの雨は、梅雨と言うよりも


安「…スコールや」


不意に聞こえてきた声の主。

下駄箱で死角になっていたところから聞こえた声。

ガラスの扉越しに空を見上げて、

普段見たことのないような表情の横顔が見えた。

長めの前髪を邪魔そうにしたのは、伸びてきたから?

それとも湿度のせい?

その手になにも握られていなくて、

ここにこうやって立ち尽くしているところを見ると、

きっと章大くんは傘を持っていないのだろうという予測をする。

6-置き傘-→←4-太陽と暗闇-



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華絢(プロフ) - 蒼乃碧さん» どうなりますかねぇ(ノω`*)んふふ♪ もう、なるように…的な(´・ω・`) (2018年4月1日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - くはぁ、せつない…(´;ω;`)これからどうなるのかな…。 (2018年4月1日 6時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ひみささん» ひみささん、いつもありがとうございます(〃ω〃) 珍しく学生設定にしてみましたー♪ お付き合い頂けたら嬉しいです(〃ω〃) (2018年3月22日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開ありがとうございます(*^^*) 高校生なんですね〜、黄色もあるんですね〜、色々楽しみです♪ (2018年3月22日 14時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華絢 | 作成日時:2018年3月22日 13時

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