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29-押しの強さ- ページ29

亮くんの優しさに甘えていることはわかってる。

だけど、私の気持ちを知っているのは亮くんしかいないし、

それにこうやって手を繋がれてしまったら私から離すことはできないから、

流されるようにこのまま道を進んでいた。

混雑する境内で、


錦「逸れへんように」


と、繋いでいた手が、更にしっかりと握られて、

お参りするのに手袋を脱いだら、

参拝後、手袋をはめる暇もなく手を取られた。

ダイレクトに亮くんの熱が伝わってきて、

急に恥ずかしくなって俯いた。

そんな私に、


錦「なぁ」


と聞き慣れた問いかけの言葉。


『ん?』


反射的に返すいつもの返事。


錦「進路って…どうするん?」


そっか。

私たち、もうすぐ高3になるんだね。


『まだ、はっきりは決めていないけど…』


あの日見たライブが忘れられないこと。

章大くんと一緒に弾いて楽しかったこと。

一番は…自分を変えたいと思ったから。


『音楽の専門学校に行きたいって思ってる。

スタジオミュージシャンとか、そういう道に行きたいなって』


初めて誰かに口にした。

夢を話しているのに、亮くんは笑ったりもせずに

ジッと私の目を見たまま聞いてくれた。

そして


錦「そうなんや」


と言ってから、目がぎゅっと垂れて、


錦「俺も似たようなもんやから、お互いに頑張ろうなぁ」


ってニカッと笑顔を向けられた。


『うん。じゃあさ…御守り買わない?』


錦「ええなぁ」


2人で一緒に買った御守り。


錦「絵馬は…また来年初詣一緒に来たら書いたらええかな」


『うん…え?』


勢いで返事をしてから気がつく。

来年?

来年も一緒に?


錦「おん、来年も。その次も来れたら…あかん?

俺やと章ちゃんの代わりにはなれへんのはわかっとるし、

こんなタイミングはつけ込んどるみたいで嫌やねんけど、あかん?

俺は俺なりに、その…Aと居りたいってまだ思ってるんやけど…」


『でも…まだ…』


章大くんが好きって思った気持ちはそのままだ。


錦「知っとるし、わかっとる。

それでもええよ?

甘えてくれて。

てか、良いって言ってくれるまで帰す気あれへんのやもん」


男らしい子犬という例えが合いそうな亮くんが目の前にいて、

本当に帰してくれなさそうな雰囲気を醸し出すから、


『亮くんが嫌な気持ちになるかもしれないのに、

それでもいいの?』


錦「俺が好きでやっとるんやから、ええの。

で?」


押しの強さに負けて

…頷いてしまった。

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華絢(プロフ) - 蒼乃碧さん» どうなりますかねぇ(ノω`*)んふふ♪ もう、なるように…的な(´・ω・`) (2018年4月1日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼乃碧(プロフ) - くはぁ、せつない…(´;ω;`)これからどうなるのかな…。 (2018年4月1日 6時) (レス) id: b2e7866667 (このIDを非表示/違反報告)
華絢(プロフ) - ひみささん» ひみささん、いつもありがとうございます(〃ω〃) 珍しく学生設定にしてみましたー♪ お付き合い頂けたら嬉しいです(〃ω〃) (2018年3月22日 21時) (レス) id: 479a0f7ed2 (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - 新作公開ありがとうございます(*^^*) 高校生なんですね〜、黄色もあるんですね〜、色々楽しみです♪ (2018年3月22日 14時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:華絢 | 作成日時:2018年3月22日 13時

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