私達は双子で私は苦労人。【すとぷり】

ゆっくりのんびり答えを待つよ。 ページ17

さとみside

「ただいまー」

玄関の方から、愛おしい声が聞こえる。
…なんてキモイな、俺。

「おかえり」

そう言いながら玄関にぞろぞろと俺達は向かう。

「え”…」

ころんが声をあげる。
なぜなら、雫ちゃんとAさんは雨に濡れたようで全身ぐしょ濡れだったのだ。

「えっ！たっ、タオル！！
なーくん！！タオルどこ！？」

莉犬が大きな声で夕飯の支度をしているなーくんを呼ぶ。
これには俺も呆気からん。
ぽかーん、と口を開ける。

「ふっ、二人ともなんでそんなに濡れてん？
雫ちゃん、傘持ってったやろ？」

ジェルが戸惑いながらを二人を問う。
そしたら雫ちゃんは、笑いだした。

「いやぁ、傘さそうとしたんだけど開かなくてですね。
結局走って帰ってきたんですよ〜。
ね、A」

雫ちゃんは、自分よりも倍近く濡れているであろう、Aさんに話を振る。

『あー、はい、そうなんですよ。
雫が傘持ってきてくれたのに開かなくて。
今度、買い替えときますね』

そんなAさんに「あ、うん…」なんて、生半可な返事をした俺は自分でもわかるようぐらい、ダサく見えた。

「タオルです！」

そう言ってタオルを二人に差し出したのはるぅと。

「ありがとう」

『ありがとうございます』

しっかりと頭を拭くAさん。
それに対して雫ちゃんはぎこちない様子だった。

「ちゃんと拭きなよ」

そう言って俺はタオルの上から雫ちゃんの頭を撫でるようにして髪を拭いた。

「あっ、ありがとう…ございます」

顔を赤く染める。
嗚呼、やっぱり可愛いな。

他のやつより、俺の方が。

そんな期待を夢見ている時点で俺はちょっと、いやや結構ばいやつだと思う。
でも、やっぱり負けられない。

「お風呂先に入っちゃいな」

なー君の声が聞こえる。
ふと、俺の横を通るAさんと目が合う。
その目はまるで

「約束は守ってくださいね」

と、言っているようだった。

「約束…ね」

他のメンバーに危害を加えない

正々堂々勝負する

「守れてるかな、俺」

ボソリと、誰にも聞こえないような声の大きさで呟く。

「何が守れてるん？」

「ジェル…」

「雫ちゃんのことが抜け駆け禁止やで」

「分かってるよ、そんなこと」

「さとみくんならやりかねないで」

「それはころんだろ」

「僕がなんだって？
てか、莉犬でしょ、それは」

「いーや、ころちゃんだね！」

まぁ、ゆっくりのんびり答えを待つよ、雫ちゃん。

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