玉ねぎ切って涙出てきて、それはそれで止まらない。 ページ12
貴方side
プップー
車のクラクションの音が耳に入る。
「おいガキ!!どこ見て歩いとんじゃ!!!」
「ごっ、ごめんなさい!!!!」
おじさんと子供の会話を片耳から片耳へと流し通す。
人混みを抜け、ロビーを抜け、ドアを開ける。
『おはようございま〜す』
「あんたねぇ…」
私の気の抜けた挨拶に眉を顰め、やてがため息をつく溝口先輩。
デスクに腰をかけ、パソコン起動させる。
「箕下くん、ちょっといいかね」
ざわざわ
ざわざわ
周りが騒がしくなる。
キーボードから顔を上げるとそこには社長が。
『は…はい』
溝口先輩の方に目を向けるとまるで「お前、何かやったのか」と言いたげな目で見てきたので首を振っておいた。
「そこに座ってくれ」
社長室につくと、一番にアロマの匂いが鼻を擽った。
ソファに腰を落とすと社長の秘書、
『あ…ありがとうございます』
手汗がじわりと湧いてきた。
ほんとに何もしてない。
うん、何もしてない。
私の記憶がそう言っている。
『それで、社長。
何故私をここに……』
「嗚呼、それがだな……」
数秒の沈黙が私達を襲う。
「それがだな……」
社長の額に冷や汗が流れる。
「それが、だな……………」
やがて、苦笑いを浮かべてきた。
何なんだ、この人は。
「すまない、忘れてしまった」
社長は申し訳そうにこちらを見る。
『は、はぁ…』
なんと言えばいいか分からず、曖昧な返事をする。
「最近物忘れが多くてね、本当にすまない。
仕事に戻ってくれ…」
『は、はい、失礼しました』
パタンと音を立てて、ドアが閉まる。
今まで肩に入っていた力が一気に抜ける。
『一体、何だったんだ…』
「おっ、丁度いい所に」
今度は誰だよ。と、怒りの思いを込めながら声のする方へ顔を向ける。
「よっ」
『は?』
顔が引き攣る。
『うわぁ…』
「うわぁ…って、何だよそれ。
てか、ひでーよ!!」
ぞわり
体中の毛が逆だった気がした。
寒気がする。
「んなことより、はいこれ」
『…何これ』
「土産」
『いや、それは分からるよ。
何処の土産ってことだよ』
「昨日行った遊園地の」
『私も行ったんだけど、わざわざ行った人間に土産渡す必要ある?』
「どうせ、お前、他人のことばっかで自分の買ってねーだろ」
「じゃっ」なんてかっこよく去ってってさ。
『余計なお世話だし』
まだ、恋心が残ってる自分がいる。
聞きたくないこと聞いたのなら、気晴らしに外にでも出てみよう。→←鳥になっても自足時給は無理難題。
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雨んぼ(プロフ) - 泣いちゃいました(笑)なんか、少し私と重なって、より一層泣きましたwwすっごく良かったです!これからも頑張ってください! (2022年5月11日 22時) (レス) @page48 id: 5fc4c4d6bd (このIDを非表示/違反報告)
葵音 - 泣いてしまいまいた。すご良くて、びっくりしてしまいました! (2022年1月26日 17時) (レス) @page43 id: c9207ab068 (このIDを非表示/違反報告)
元気に生きていたい! - はい!泣きましたァァ!!すごく良かったです!!!!! (2021年8月21日 18時) (レス) id: 0301fd6d5d (このIDを非表示/違反報告)
アネモナ - 涙がでできました!私はマスク外したくないから外せって言われるの大嫌いですね (2020年5月24日 0時) (レス) id: 8d7833d063 (このIDを非表示/違反報告)
miko - なんか、本屋に売ってあるようなクオリティーでとても好きな作品です!凄く面白かったです! (2020年5月12日 0時) (レス) id: 6feb6d5170 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あはぴー x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=2bf929b5ed877904e3eb7e3aafbf136b...
作成日時:2019年4月4日 15時