私達は双子で私は苦労人。【すとぷり】

聞きたくないこと聞いたのなら、気晴らしに外にでも出てみよう。 ページ13

貴方side

村山に貰った土産を胸に抱え、オフィスに向かう。
さっき見たけど、中身はクッキーだった。
あとで、溝口先輩と食べようかな。

『てか、なんであいつがここにいるんだ？』

独り言を漏らす。
あいつはここで働いていない。
結構な年、働いている私が証言するんだ。
間違いないだろう。
だとしたら

『取引で来てるとか』

だからといって、何故私への土産を…。
私、会社(ここ)教えてないんだけど。
高校時代の友人伝いか。
半ば呆れながら廊下の角を曲がろうとした時、女性社員の声が聞こえた。

「ねぇ、知ってる？」

「何が？」

「ここに最近取引に来てる会社の村山拓也さん」

「知らないけど、その人がどうかしたの？」

「めちゃくちゃイケメン何だって、それが！」

あいつ、ここまで来て噂されちゃってるよ。
やっぱり顔がいいやつは違うね。
私には関係ない話だし、さっさとオフィス行こ。
そう思うが、心臓の音はだんだん大きくなる。

どくどく

どきどき

どくんどくん

どきんどきん

2人の女性社員には聞こえていないだろうが私にはとても大きく聞こえる。
そんな思いは振り払い、先程止めた足を再び動かす。
角を曲がるが2人の女性社員は気づいてない様子だった。
このまま、通り過ごそう。

「どれぐらい？」

「あっ、写真あるよ！
この前、撮らせてもらったの！」

「どれどれ…って、めっちゃイケメンじゃん」

「だから言ったでしょ〜。
しかもね、ここだけの話、村山さんって自分の会社に彼女2人いて、うちの会社には3人もいるんだってさ。
本人から聞いたの！
特別に教えてあげるって！！」

嘘でしょ。

ぼとっ

腕の中から、クッキーが落ちる。
今度は、2人の女性社員に聞こえる大きさで。

「え…」

1人の女性社員が小さく声を上げる。
私は恥ずかしくなり、その場から急いで離れる。

最低

頭の中をその言葉で埋め尽くす。

あいつは最低な元彼だ。

あいつは最低な男だ。

あいつは最低な人間だ。

最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低。

最低と言う言葉が嫌という程リピートされる。

そういう私も最低だ。

嗚呼、酷いやつだ。
オフィスに戻ると、元気な声が聞こえる。

「箕下、どうだった！！なんか言われたか！？
ってか、その手に持ってるやつ何？」

『あ、溝口先輩。
これ、クッキーです。
ぜひ佐橋さんと召し上がってください。
それじゃ…』

逃げるように自分のデスクに向かう。
嗚呼、かっこ悪。

雨は悲しみの象徴とか、誰が決めたのさ。→←玉ねぎ切って涙出てきて、それはそれで止まらない。

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